研究課題/領域番号 |
19K23719
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 幹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (00844606)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | miRNA / DROSHA / DGCR8 |
研究実績の概要 |
先行研究においてPri-miRNAを切断する活性をもつことが示されているヒト由来DROSHAの残基番号390-1365とDGCR8の残基番号285-750からなる複合体を調製するために (Nguyen et al., Cell 2015)、それぞれの遺伝子を含む組換えバキュロウイルスを作製し、それらをHEK細胞に二重感染させることで両者を発現させた。この細胞を破砕した後に遠心し、この上清からDROSHAに融合させたFLAGタグとDGCR8に融合させたHisタグを用いてDROSHA-DGCR8複合体の精製を行ったが、一部夾雑タンパク質のバンドが見られた。そこでこのサンプルをイオン交換カラムや疎水性カラムにアプライすることでDROSHA-DGCR8複合体の純度の向上を目指したが、このやり方では夾雑タンパク質を除くことはできなかった。そこでDGCR8もしくはDROSHAにGFPを融合させたコンストラクトを作製し、同様にHEK細胞に二重感染させることで両者を発現させた。それぞれのタンパク質とGFPの間にはTevプロテアーゼによる切断配列が導入されている。精製は、GFP抗体をカップリングさせたレジンを作製し、これに細胞破砕液の遠心上清を加えてGFPをレジンに結合させ、その後Tevプロテアーゼを加えることでレジンに結合したGFPからDROSHA-DGCR8複合体を遊離させた。その結果DROSHAにGFPを融合させた場合においてDROSHA-DGCR8複合体が検出され、粗精製に成功した。しかしDROSHAに比べてDGCR8の発現量が低く、DGCR8の発現量を向上させることが今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までにHEK細胞を用いてDROSHA-DGCR8複合体の粗精製サンプルを得ることに成功している。また、これまでのFLAGタグとHisタグを用いた精製からGFPタグによる精製に代えることでDROSHAの収量の向上が確認できた。一方で、DROSHAと比べてDGCR8の発現量が低いことが現在の課題である。DGCR8はDROSHA1分子に対して2分子結合し、DGCR8が結合しないとDROSHAが凝集してしまうことが知られているため (Nguyen et al., Cell 2015)、DGCR8の発現量の向上はDROSHA-DGCR8複合体の収量を向上させるために不可欠である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はGFPを融合させたDROSHAに対してDGCR8のコンストラクトを検討することでDGCR8の発現量の向上とDROSHA-DGCR8複合体の収量の向上に努める。具体的には、DGCR8にGSTといった可溶性のタグを融合させることでDGCR8の可溶性の向上を試みる。また先行研究によるとDROSHAと結合するDGCR8の最小領域である残基番号728-750をDROSHAと共発現させて精製を行った後に、別に精製した残基番号285-750のDGCR8を加えることでDROSHAに結合したDGCR8を残基番号728-750から285-750に置き換えるという方法も報告されている (Nguyen et al., Cell 2015)ので、これも試みる。GSTを融合させた残基番号285-750のDGCR8を大腸菌で発現させて精製することには既に成功している。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は本研究に関して学会や出張に行くこともなく、また実験試薬に関しても既に購入されていた在庫でほとんど済ますことができたため。
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