研究実績の概要 |
今年度も昨年度と同様に人由来DROSHAとDGCR8をHEK細胞で共発現させることで両者の複合体を調整することに取り組んだ。特にDROSHAにGFPを融合させたコンストラクトをDGCR8とともにHEK細胞で発現させ、GFP抗体をカップリングさせたカラムで精製することに取り組んだのだが、両者、特にDGCR8の発現量が少なく、この方法でクライオ電子顕微鏡での観察に十分な量のサンプルを得ることはできなかった。そして発現量の向上に取り組んでいる間に中国と米国の研究グループからDROSHAとDGCR8とpri-miRNAのクライオ電子顕微鏡によって決定された複合体構造が報告され、DROSHAとDGCR8によるpri-miRNAの認識機構や切断機構が解明されてしまった (Jin et al., Mol. Cell 2020, Partin et al., Mol. Cell 2020)。 そこで申請者は同じmRNA metabolismの分野での研究テーマを探し、人のミトコンドリア由来LRPPRC-SLIRP-mRNA複合体のクライオ電子顕微鏡による構造決定を始めた。LRPPRCとSLIRPはミトコンドリア内でmRNAと結合し、それのPNPaseによる分解を抑制するとともにポリアデニル化を促進することでmRNAを安定化する (Chujo et al., Nucleic Acids Res. 2012)。申請者はLRPPRCとSLIRPをそれぞれ大腸菌で発現させて精製し、精製タンパク質をpoly U mRNAと混合してゲル濾過することでLRPPRC-SLIRP-mRNA複合体を調整した。そしてクライオ電子顕微鏡で観察するためのグリッドを作製しデータを取得しデータ処理を行ったが、2D classificationにおいて鮮明な粒子像を得ることはできなかった。
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