核膜は核と細胞質を隔てる壁であるだけでなく、細胞活動に伴うダイナミックな発現変動を行う足場としても重要である。その中枢を担うのが核膜タンパク質であり、クロマチンとの相互作用を通じてクロマチン機能を制御する。しかし、核膜タンパク質は機能重複多く、解析は困難を極める。本研究課題では核膜タンパク質Lem2とLnp1が核膜そのものの構造にも影響することに着目し、Lem2・Lnp1が核膜構造を制御する分子メカニズムを明らかにすることで、核膜タンパク質が核膜構造を介してクロマチンを制御する一連の仕組みの解明を目的とした。 本研究課題では、蛍光顕微鏡による生細胞観察、蛍光顕微鏡と電子顕微鏡を組合わせた光―電子顕微鏡相関観察法を用いた解析によって、Lem2とLnp1には連続して繋がっている核膜と小胞体膜の境界を調整する役割があることを明らかにした。核膜の修復・維持を行うことが知られているESCRT-III複合体との関連については、核膜修復に必須であるATPアーゼVps4の細胞内局在がLem2・Lnp1によって制御されていることを発見した。Lem2・Lnp1欠損とVps4欠損では同様の核膜異常を引き起こすことからも、Lem2・Lnp1はESCRT-III複合体を正しく核膜上に導くことで核膜の維持を行っていると考えられる。さらに、脂質代謝に関与する小胞体タンパク質Apq12がLem2・Lnp1の機能を相補することを発見し、このことからLem2・Lnp1は核膜・小胞体膜の脂質調整を介してESCRT-III複合体等が安定して局在できる足場を提供している可能性を示した。これらの結果については最終年度にCommunications Biology誌にて論文を発表した。
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