研究課題/領域番号 |
19K23731
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大屋 恵梨子 東京大学, 定量生命科学研究所, 助教 (60847721)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | ヘテロクロマチン / 遺伝子 / 発現制御 / 減数分裂 / エピジェネティクス / 分裂酵母 |
研究実績の概要 |
減数分裂は、精子や卵子等の生殖細胞の形成に必須であり、この過程に異常が生じると、染色体異常が生じ、不妊や個体の致死、ダウン症などの染色体異常疾患を引き起こす。減数分裂過程で生じる異常の原因は、①DNA配列依存的な異常と②それに依存しないエピジェネティックな異常に大別され、これまでの当該分野における研究は主に遺伝学的見地から①に注目したものがほとんどであり、②に関して詳細に調べた例は殆どない。本研究では、DNA配列依存しないエピジェネティックな観点から減数分裂過程における染色体の構造変換のダイナミクスを明らかにし、その構造変換を制御する因子を特定することを目指し、以下の課題を中心に研究を実施した。
【減数分裂期における経時的クロマチン構造変換のプロファイリング】減数分裂期の一連の過程におけるクロマチンの構造変換のプロファイルを明らかにする事を目的とし、分裂酵母をモデル真核生物として用い、クロマチンの構造変換を制御する代表的マークであるヒストンH3K9メチル化修飾の経時的なゲノムマッピングを行う為の条件検討を行った。この経時的なマッピングの為の実験条件として、細胞集団を同調的に減数分裂させる必要がある。昨年度は、高温に移すと抑制が外れて減数分裂を開始する事が出来る減数分裂誘導関連遺伝子の温度感受性変異体を用いた同調を試みたが、この温度変化によってクロマチン構造自体が影響を受ける可能性が示唆された。よって、当該年度は、この代替法として、減数分裂誘導関連因子のATPアナログ感受性変異株を用い、ATPアナログ阻害剤で該当因子を阻害する事で、同調的な減数分裂への誘導を試みた。細胞の同調率を高める為、ATPアナログ阻害剤の濃度、細胞の培養温度・時間などの条件を検討し、実験条件を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、細胞を同調的に減数分裂させ、かつその過程がクロマチン構造自体へ影響を与えない系が必要である。当該年度は、減数分裂誘導関連因子のATPアナログ感受性変異株を用い、ATPアナログ阻害剤で該当因子を阻害する事で同調的な減数分裂への誘導を試みた。細胞の同調率を高める為、ATPアナログ阻害剤の濃度、細胞の培養温度・時間などの多岐に渡る実験条件の検証に多くの時間を費やした。また、新型コロナウイルス感染症の影響により、大学での研究活動が制限され、当初の計画より遅れる事となった。
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今後の研究の推進方策 |
今回確立した実験条件を用いて、細胞集団を同調的に減数分裂に誘導し、減数分裂期における経時的クロマチン構造変換のプロファイリング、及びクロマチン構造変換を制御する因子・修飾の同定を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
1) 当該年度に、同調的に減数分裂させた細胞を用いて、クロマチン免疫沈降シーケンシング(ChIP-seq)を行い、減数分裂期の一連の過程におけるクロマチンの構造変換のプロファイルを明らかにする予定であった。しかし、細胞同調の実験条件の検討に多くの時間を費やし、ChIP-seqの実験に用いる機器や試薬の購入ができず、次年度使用額が生じた。2) 新型コロナウイルス感染症の影響によって、大学での研究活動の制限により当初の実験計画より遅れが生じ、また、参加予定であった学会がオンラインでの開催となり、計上していた予算を使用せず、次年度使用額が生じた。この為、これらの機器や試薬の購入、および積極的に学会に参加して情報収集及び成果発表を行う事とし、次年度使用額はそれらの費用に充てる。
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