DNA二本鎖損傷部位にはしばしばRNA/DNAハイブリッドが形成しており、RNA/DNAハイブリッド加水分解酵素であるRNase H2の活性が修復を制御する。RNase H2の機能欠損は先天性自己免疫疾患Aicardi-Goutières syndrome(AGS)の原因として知られるが、本酵素がRNA/DNAハイブリッドを認識する機構やDNA修復タンパク質と相互作用する機構は明らかになっておらず、RNase H2を介したDNA修復の異常がAGSと関与するかは不明である。本研究では、RNase H2と基質の相互作用(1)およびRNase H2とBRCA2の相互作用(2)について、詳細な分子機構を明らかにするため生化学・構造生物学的研究を行った。 (1)について、RNase H2の不活性変異体をRNA/DNAハイブリッド基質の存在下で結晶化スクリーニングを行い、複数の結晶を取得したが、X線回折実験では構造解析に十分な分解能は得られなかった。一方で、活性中心への変異によってRNA/DNAハイブリッドへの活性を特異的に失った変異体を取得し、相互作用に重要なアミノ酸を同定した。 (2)について、BRCA2のリピートペプチドとRNase H2のプルダウン・ゲルろ過クロマトグラフィーによる相互作用解析を行ったところ、基質・金属イオンの有無に関わらず複合体の形成が起こらず、安定な複合体形成には他のタンパク質が必要である可能性が示唆された。
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