研究課題
日本人女性の8%が罹患する乳がんの約7割がエストロゲン受容体(ER)陽性タイプである。そのため、エストロゲンを除くホルモン療法が有効であるが、治療中にエストロゲンに依存しない増殖能を獲得し、再発することが問題である。先行研究により、再発乳がん細胞では、エレノア非コードRNAが過剰発現し、ER遺伝子の転写が活性化されることを報告した。また、レスベラトロールがエレノアRNAの転写を阻害し、細胞死を誘導することを報告した。しかし、これらの過程にエレノアRNAがクロマチン構造にどのように影響し、遺伝子発現を調整するかは不明である。本研究では、非コードRNAがクロマチン構造に影響を与える機構を解明することを目的とした。細胞株を用い、クロマチン構造解析法であるHi-C法などを用いて解析を行なった。再発乳がんモデル細胞では、細胞死を促進するFOXO3遺伝子と細胞増殖に関わるER遺伝子をコードするDNA領域が3次元的に近接し、お互いの遺伝子発現が協調的に活性化されていることを見出した。再発乳がん細胞がレスベラトロールにより細胞死に誘導されやすい性質の根底にあるメカニズムは、非コードRNAによるクロマチン構造の形成から生じている可能性を報告した。また、エレノアRNAを標的とした核酸治療薬の有効性を示し、エレノアRNAが治療標的になりえることを報告した。さらに、エレノアRNAはクロマチン構造を転写されやすい状態に誘導し、転写を促進する場の形成に寄与することを報告した。海外留学のために一時中断期間を設けたため、今年度はデータ解析を主に行った。Hi-Cや公共データからエレノアが転写される領域は乳がん細胞特有にA-コンパートメントと呼ばれる転写が活性化された区画に属することが分かった。現在、この区画の中の重要な領域をゲノム編集することで、細胞死が誘導されることを見出し、現在論文作成中である。
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Oral Science International
巻: - ページ: -
10.1002/osi2.1227
Journal of Oral and Maxillofacial Surgery, Medicine, and Pathology
10.1016/j.ajoms.2024.04.002