研究課題/領域番号 |
19K23742
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中山 北斗 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (30610935)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | Evo-Devo / 葉 / Amborella trichopoda / インフォマティクス / 進化発生学 / 形態 / RNA-seq |
研究実績の概要 |
本研究計画は、被子植物において葉の獲得を可能にした分子機構を世界に先駆けて明らかにしようとするものである。植物において葉の獲得は光合成の効率化をもたらし、放出される酸素が地球の大気組成の変化をももたらした。応募者は、これまでその詳細が全くの謎で あった葉の獲得を可能にした分子機構を、進化学的観点から複数の植物群を選択し、分子生物学的手法、インフォマティクスなどを駆使して2年計画で明らかにする計画である。 2020年度は、研究実施計画にあるように、複数のモデル植物を用いたRNA-seqとそのデータを用いた解析を行なった。具体的には、それぞれのRNA-seqデータを用いてのDEG解析や、カウントデータを用いた共発現遺伝子ネットワークの構築と、その比較を行なった。これまでに、現存する被子植物の系統樹の中で最基部に位置するAmborella trichopoda(アンボレラ)、そして葉の形態は複葉のSolanum lycopersicum(トマト)のRNA-seqデータを用いて、共発現遺伝子ネットワーク解析を行ない、それらの比較を行なった。まずアンボレラのRNA-seqデータについて、先行研究で葉原基の発生時にはKNOX1遺伝子の発現が抑制されることが知られていたが、今回取得したRNA-seqデータからも同様の結果が得られた。そのため今回実施したRNA-seqは問題なく行われたことを確認した。また、DEG解析や共発現遺伝子ネットワークの比較により、系統的に離れたアンボレラとトマトの2種の葉原基内の遺伝子発現プロファイルの基本的な部分は類似していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、被子植物が葉の獲得を可能にした分子機構を明らかにするために、複数のモデル植物を用いたトランスクリプトーム、葉の形態形成遺伝子ネットワークの構築、種間共通するコアネットワークの抽出、コアネットワークの変遷の解明と機能解析を行なう計画であるが、そのうち、2020年度は、複数のモデル植物を用いたトランスクリプトームと共発現遺伝子ネットワークの構築とそ種間比較を完了した。 そのため、進捗状況は、(2)おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、アンボレラとトマトを用いたRNA-seqと共発現遺伝子ネットワークの構築、そしてその種間比較を行ない、基本的な部分は類似していることを確認している。また、当初の計画にあったシロイヌナズナのRNA-seqにおいては予定よりも細かい区分でRNA-seqを行なうこととしており、現在進行中である。そのデータが得られ次第、既に行なった2種の場合と同じく、WGCNA法による共発現遺伝子ネットワークの構築を行なう。そののち、構築された遺伝子ネットワークの種間比較を、統計的にネットワーク構造を比較することが可能なRパッケージであるDiffCorrやOrthoClustなどを用いて解析を行ない、被子植物の葉の発生に関わる遺伝子群を探索し、機能解析を行なう計画である。加えて、茎頂における詳細な遺伝子発現を明らかにするために、それぞれの種を用いたsingle-cell RNA-seq(scRNA-seq)を計画している。scRNA-seqは個々の細胞の遺伝子発現プロファイルにより、器官や組織ごとの遺伝子発現を明らかにすることができ、これにより、現在のRNA-seqでは区別不可能であった茎頂と発生最初期の葉原基の遺伝子発現を明らかにすることが可能になると考えられる。これにより、より詳細な共発現遺伝子ネットワークが構築でき、葉の発生に関わる遺伝子群の探索の精度がより上がると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの蔓延による研究の遅れのため、次年度使用額が生じた。 使用計画としては、RNA-seqを行なうための試薬の購入などに充てる計画である。
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