昨年度に引き続き、オートファジーに依存して分泌されている積荷タンパク質や、オートファジーが体液成分に与える影響を解析するために、ショウジョウバエを用いて以下の研究を行った。 1. 野生型、腎細胞欠損型、オートファジー(ATG)遺伝子欠損型の体液プロテオミクスで変化が見られたタンパク質について、3齢幼虫の全身サンプルからRNAを抽出し定量PCRで遺伝子発現量を検討した。その結果、血球細胞から体液中に分泌されるNimB2の発現上昇が腎細胞欠損型、ATG遺伝子欠損型のいずれにおいても観察された。野生型として用いたw1118系統とOreR系統のいずれにおいてもNimB2はほとんど発現していなかったことから、腎細胞欠損による体液環境の変化や、オートファジーの欠損が血球細胞における転写制御に影響することが示唆された。 2. 腎細胞欠損とATG遺伝子欠損の掛け合わせから思いがけない結果が得られた。ATG遺伝子欠損型の1つであるFip200[3F5]は蛹で発育が停止するが、腎細胞欠損型Klf15[NN]と掛け合わせた二重欠損型では、幼虫でほとんどの個体が致死に至った。この二重欠損型にFip200遺伝子を入れ戻すとKlf15[NN]の単独欠損型と同様に成虫まで発育した。これらの結果から、体液タンパク質のろ過を担う腎細胞とオートファジーの間に遺伝学的相互作用があることが示唆された。 3. オートファジーが体液ホメオスタシスに影響することが考えられたため、野生型、腎細胞欠損型、ATG遺伝子欠損型3系統の計5系統について体液メタボロームを解析した。その結果、ATG遺伝子欠損型3系統のいずれにおいても体液中のメチオニン代謝物の減少が見られた。 以上のように、本研究ではオートファジーに依存して分泌されている積荷タンパク質と、オートファジーによって制御されている体液代謝物の網羅的プロファイルを得ることができた。
|