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2019 年度 実施状況報告書

上皮細胞における運動と増殖の協調的制御機構の解明:細胞間の力学相互作用に着目して

研究課題

研究課題/領域番号 19K23748
研究機関名古屋大学

研究代表者

平田 宏聡  名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (90414028)

研究期間 (年度) 2019-08-30 – 2021-03-31
キーワードメカノバイオロジー / 細胞協同現象 / アドヘレンスジャンクション / 葉状仮足 / Rac1
研究実績の概要

上皮組織が正常に形成され機能するためには、上皮細胞の運動と増殖の適切な制御が不可欠である。しかし、上皮細胞の運動と増殖が時空間的に協調して制御されるしくみは不明である。上皮組織において上皮細胞は互いに接着して力をやり取りし、これにより上皮細胞は協同的に運動することが知られている。一方で、我々はこれまでに、細胞間接着構造であるアドヘレンスジャンクションに作用する引張力が細胞増殖を抑制することを見出している。そこで本研究では、上皮細胞の運動と増殖の協調的制御に細胞間の力が関わっているとの仮説のもと、その役割の解明を目指す。そのために、細胞周期蛍光バイオセンサーFucciを用いた細胞周期進行のモニターと、粒子画像流速計測法(PIV)による細胞運動速度場の計測を組み合わせて解析を進める。本年度は下記の結果を得た。
上皮細胞をコラーゲン基質上に単層培養すると、播種後30時間程度までは活発な細胞協同運動と細胞周期の進行を示し、その後、播種後50時間程度までに細胞運動と細胞周期進行が基底レベルまで低下することが見出された。そこで、この時間依存的な運動と増殖の協調制御をモデルとして解析を進めた。
上皮細胞の協同運動は葉状仮足の形成により駆動される。一方で、葉状仮足の突出は細胞間に押力をもたらすので、アドヘレンスジャンクションの引張力を低下させることで細胞増殖を促進する可能性も考えられる。そこで、葉状仮足の形成が運動と増殖の協調制御に果たす役割を調べた。葉状仮足の形成と葉状仮足のマスターレギュレーターであるRac1の活性は、播種後30時間程度を過ぎると大幅に低下した。また、Rac1の阻害により葉状仮足の形成を妨げると、播種後30時間程度までの細胞協同運動と細胞周期進行の両者が抑制された。これらの結果から、Rac1による葉状仮足形成が単層上皮細胞の運動と増殖を共に促進させることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

単層上皮細胞において、葉状仮足の形成が細胞運動のみならず細胞増殖も促進し、両者の協調制御に関与することを示唆する結果を得ることができた。

今後の研究の推進方策

単層上皮細胞においてアクトミオシンを活性化することでアドヘレンスジャンクションにかかる引張力を高めた場合の細胞運動と細胞周期進行への影響を調べる。なお、アクトミオシンの活性化や葉状仮足の阻害はアドヘレンスジャンクションにかかる力以外にも影響するので、ネガティブコントロールとしてアドヘレンスジャンクションを形成していない細胞(低密度培養細胞およびアドヘレンスジャンクションタンパク質を欠損した細胞)への影響を並行して評価する。また、細胞間接着分子E-カドヘリンのFRETテンションセンサーを用いて、アドヘレンスジャンクションに実際にかかる引張力の変化を定量する。これらの取組みにより、上皮細胞の運動と増殖の協調的制御における細胞間の力の役割を検証する。

次年度使用額が生じた理由

本年度は、上皮細胞の運動と増殖の協調制御に葉状仮足の形成が関与することを示唆する重要な結果が得られたため、その役割について当初の計画よりも集中的に掘り下げて解析した。そのため、他の因子の解析に用いる予定であった阻害剤、アゴニスト、抗体などの購入を見送った。これらの物品は次年度に購入し、計画していた解析を進める。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] MMP24 as a Target of YAP Is a Potential Prognostic Factor in Cancer Patients2020

    • 著者名/発表者名
      Wataru Sugimoto、Katsuhiko Itoh、Hiroaki Hirata、Yoshinori Abe、Takeru Torii、Yasumasa Mitsui、Yemima Budirahardja、Nobuyuki Tanaka、Keiko Kawauchi
    • 雑誌名

      Bioengineering

      巻: 7 ページ: 18

    • DOI

      10.3390/bioengineering7010018

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Tension-dependent Generation of Biochemical Signals on Actomyosin Fibers2020

    • 著者名/発表者名
      Hiroaki Hirata、Masahiro Sokabe
    • 雑誌名

      Seibutsu Butsuri

      巻: 60 ページ: 89~93

    • DOI

      10.2142/biophys.60.089

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 細胞増殖の接触阻害における物理的因子の役割2020

    • 著者名/発表者名
      平田宏聡、Oleg Dobrokhotov、曽我部正博
    • 雑誌名

      実験医学

      巻: 38 ページ: 93~99

  • [学会発表] RhoA activation induces cell cycle exit and differentiation of skin cancer cells2019

    • 著者名/発表者名
      Oleg Dobrokhotov、Masahiro Sokabe、Hiroaki Hirata
    • 学会等名
      日本生物物理学会第57回年会
    • 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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