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2019 年度 実施状況報告書

マウス胚における前後軸の起源

研究課題

研究課題/領域番号 19K23756
研究機関徳島大学

研究代表者

高岡 勝吉  徳島大学, 先端酵素学研究所(オープンイノベ), 准教授 (90551044)

研究期間 (年度) 2019-08-30 – 2021-03-31
キーワード前後軸 / マウス胚 / 非対称性 / 不妊治療 / 着床
研究実績の概要

生物はどのようにして体軸を獲得するのだろうか?ショウジョウバエを含む多くの生物は、bicoidに代表されるような母性効果遺伝子のmRNAが非対称に分布することにより、すでに卵子の段階で分子レベルの非対称情報を獲得している。そして、それら分子レベルの非対称情報が後の体軸情報を提供する。それに対して、ヒトやマウスといった哺乳類は、依然不明なままである。
研究代表者は、これまで「丸い哺乳類の受精卵がいつどのようにして非対称な形態を獲得するのだろうか?」という発生学の命題に対し、マウス胚の3つの体軸の中で最も早期に形成される前後軸の初期決定機構をさかのぼって解析することでアプローチしてきた(Takaoka et al., Dev. cell 2006) (Takaoka et al., Nature Cell Biology, 2011) (Takaoka et al., Dev. 2012)。さらに、前後軸方向を決定する細胞群DVE(Distal Visceral Endoderm, 遠位臓側内胚葉)の位置は受精後3.5日胚のNodal発現開始細胞によって決定され、少なくとも受精後3.5日胚は前後方向の基盤となる非対称な分子情報を獲得していることを明らかにした(図1b) (Takaoka et al., Nature commun. 2017)。本研究では、さらに遡って「Nodalが一部の細胞のみで発現するメカニズムを明らかにする」ことで、マウス胚の前後軸の起源の解明に迫りつつある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究代表者はこれまでに、マウス胚の前後方向は受精後4日の着床期付近の胚DVE(Distal Visceral Endoderm, 遠位臓側内胚葉)と呼ばれる細胞群によって決定していることを明らかにした(Takaoka et al., Dev. Cell 2006, NCB 2011, Dev.2012)。また、このDVE細胞は、Nodalシグナルのネガティブフィードバック分泌因子であるLefty1の発現で規定されており、受精後3.5日胚の内部細胞塊(ICM, Inner Cell Mass)の1細胞でNodalが発現を開始し、その発現細胞でNodalシグナルの活性が閾値をこえて、Lefty1を誘導する。誘導されたLefty1はNodalよりも早く分泌して周りのICMの細胞のNodalシグナルの活性を抑制することで、DVEが形成されることを明らかにした(Takaoka et al., Nature commun. 2017)。つまり前後軸決定細胞群DVEの形成される位置はNodalが発現を開始する位置に依存していることがわかった。
以上より、本研究では、受精後3.5日以前の胚におけるNodalの発現制御機構について解析を行うことで、前後軸を決定する細胞群DVEの位置が、ランダム決定されているのか、もしくはショウジョウバエなどの生物のようにすでに決定されている非対称な分子情報を基に決定されているのかを明らかにしている。具体的には、ゆらぎによりランダムにNodalを誘導するシグナルが入力されるという仮説を検証するためにNodalシグナル可視化トランスジェニックマウスを作製中である。Nodalを誘導するシグナル経路の構成因子の限局により特定の細胞でのみNodalの発現が誘導されるという仮説を明らかにするために、様々な阻害剤、siRNAを用いたノックダウンアッセイを行なっている。

今後の研究の推進方策

応募者はこれまで一貫して「丸い哺乳類の受精卵がいつどのようにして非対称な形態を獲得するのだろうか?」という発生学の命題の解明を最終目標に掲げ、第一段階として、マウス胚の3つの体軸の内もっとも早期に形成される前後軸に着目し、初期形成過程をさかのぼって解析することで体軸の起源にアプローチしてきた。
今後も引き続き、受精後3.5日以前の胚におけるNodalの発現制御機構について解析を行うことで、前後軸を決定する細胞群DVEの位置が、ランダム決定されているのか、もしくはショウジョウバエなどの生物のようにすでに決定されている非対称な分子情報を基に決定されているのかを明らかにする。
本研究の完了により、ショウジョウバエを含む多くの生物はすでに卵子の段階で分子レベルの非対称情報を獲得しており、それら分子レベルの非対称情報が後の体軸情報を提供する。それに対して、ヒトやマウスといった胎生動物がいつどのようにして体軸の基となる非対称な分子情報を獲得するのかは長らく不明であった。本研究が完了した場合、発生学の命題が明らかになり、マウス胚発生学の歴史の中で重要なマイルストーンとなる。

次年度使用額が生じた理由

予期しない実験結果が出たため、研究方針を転換した。それにより、2019年度に予定していた実験を2020年度に行うように変更した。発生工学試薬代と実験動物飼育費として消耗品、学会への出張目的で旅費として使用予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Ciliogenesis‐coupled accumulation of IFT‐B proteins in a novel cytoplasmic compartment2019

    • 著者名/発表者名
      Lamri Lynda、Twan Wang Kyaw、Katoh Takanobu A.、Botilde Yanick、Takaoka Katsuyoshi、Ikawa Yayoi、Nishimura Hiromi、Fukumoto Akemi、Minegishi Katsura、Mizuno Katsutoshi、Hamada Hiroshi
    • 雑誌名

      Genes to Cells

      巻: 24 ページ: 731~745

    • DOI

      10.1111/gtc.12722

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Uncovering the mystery of mammalian oocyte-embryo development.2019

    • 著者名/発表者名
      Takaoka K
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会
  • [図書] Precision Medicine2019

    • 著者名/発表者名
      高岡勝吉
    • 総ページ数
      85
    • 出版者
      北隆館/ニューサイエンス社

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公開日: 2023-12-25  

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