研究課題/領域番号 |
19K23757
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
渡邊 美穂 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 非常勤講師 (20845317)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 再生医療 / 歯肉幹細胞 / 還流培養 / 3次元培養 / 骨再生 |
研究実績の概要 |
生体内の骨欠損は様々な原因で生じ、機能や症状改善のため薬剤療法や骨移植等が行われている。近年、細胞・足場・成長因子を組み合わせた組織工学が骨欠損の新しい治療法の選択肢として注目を集めている。また、数多くの骨系統疾患が存在するが未だ有効な治療法が見つかっていないものも多く、病態解明や治療法の開発が急務となっている。しかしながら、骨をターゲットにした研究ではマウス等の生体を用いた実験が主体となっており、in vitroの骨実験モデルは未だない。そこで本研究では、ヒト歯肉間葉由来の幹細胞から還流培養法を用いてin vitroで骨組織を作製し、新たな骨移植材料作製およびin vitroの骨実験モデル確立を目的とした。 申請者は、ヒト歯肉組織からの歯肉幹細胞分離および同定に関して検討をスタートさせた。ヒト歯肉組織の初代培養細胞からコロニアルクローニング法にて歯肉間葉幹細胞を分離し、分離した細胞は免疫染色で幹細胞マーカー(Nanog, Oct4, Sox2)陽性であることを確認した。また、得られた歯肉間葉幹細胞に骨分化誘導をかけることで、骨芽細胞への分化能力を確認している。低侵襲で容易に採取可能であり、歯牙の無い人からも採取可能なヒト歯肉組織は、in vitroでの骨組織作製の細胞源として有用であることが示唆された。今後はさらに細胞数を増やし、還流培養装置を用いた3次元培養に移行する予定である。 本研究で使用している歯肉間葉幹細胞(体性幹細胞)はiPS細胞やES細胞と比較して癌化の危険性が全くなく、安全に再生医療に応用できる。また口腔内由来の幹細胞は、これまで広く用いられてきた骨髄幹細胞と比較し、より高い増殖能と多分化能を有することが知られている。多くの人に応用可能な新たな骨移植材料およびin vitroの骨実験モデルを確立することで、骨関連疾患への治療および研究に寄与できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト歯肉組織の収集が遅れていることにより、細胞量が少なく3次元培養への移行も遅れている。引き続き組織、細胞の収集を行い、3次元培養および培養サンプルの解析を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現時点において、歯肉間葉幹細胞の分離、同定までは確認できている。今後は得られた細胞を3次元構築して還流培養を行い、培養サンプルの解析およびin vivoにおける実験を遂行予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度予定していた顕微鏡用カメラの購入が遅れており、また、in vitroでの実験が歯肉の入手数の減少で遅れ、実験動物の購入が遅れているため。 当該年度繰越分は、次年度に顕微鏡用カメラの購入および実験動物の購入費、培養に必要な消耗品やサンプル解析のための試薬購入費として使用を計画している。
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