研究実績の概要 |
光反応行動は周囲の光情報を感知して最適環境を選ぶ応答であり、光合成生物にとって生存に深く関わる。緑藻ボルボックス目に属する多細胞生物は、細胞どうしは直接的な情報交換を行わないにも関わらず、個体全体として調和のとれた動きをする。本研究は、このような多細胞生物としての巧みなシステムが、単細胞生物から細胞数を増加させる進化の過程でどのように段階的に獲得されていったのかを明らかにすることを大きな目標としている。そのために、本研究課題ではボルボックス目に見られる多細胞化進化の中間過程にあると言えるユードリナを中心に光反応行動の特徴を明らかにし、細胞数の異なる種の間で比較するというアプローチをとった。今年度はまず、緑藻ボルボックス目の培養システムを立ち上げるとともに、上記目的に最適な株と培養条件を検討・選定した。そして、Eudorina elegans(16-32細胞)、Volvox carteri(約2,000細胞)、V. dissipatrix(約20,000細胞)の三種について、暗室内にて、高速度カメラで鞭毛運動を観察した。観察光には赤色光(>630nm)を用い、照射から反応開始までの時間、反応持続時間、鞭毛打頻度等を定量的に求めた。これまでのところ、直径が数十から数百マイクロメートルの小型の多細胞種は光照射に対して鞭毛運動を停止させ、それ以上の大型の多細胞体制の種は停止させずに方向変化を起こすことが観察されている。鞭毛運動の方向変化はより大きな個体の動きを制御するのに効果的であると考えられる。
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