研究課題/領域番号 |
19K23761
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
加藤 孝信 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (80844935)
|
研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
キーワード | 左右体軸形成 / ノード不動繊毛 / 光ピンセット / メカノセンサー / カルシウムイメージング |
研究実績の概要 |
哺乳類の左右軸の決定に関与する、マウスノード不動繊毛はメカノセンサーなのか否かを明らかにするため、本年度は以下の研究を実施した。 ①光ピンセット光路の構築 理化学研究所の当研究室が保有するマウス初期胚のカルシウムイメージングを行うための光学顕微鏡 (CSU-W1) に、自作の光ピンセット光路を構築した。このシステムにより、マウス初期胚での光ピンセットを用いた顕微操作が可能となった。 ②ノード流を欠失したミュータントを用いた、ノード不動繊毛のカルシウムイメージングと顕微操作 繊毛は "ノード流" という流れを感知していることが知られているが、このノード流を欠失したマウスを用いてカルシウムイメージングを行った。具体的には、当研究室が保有するノード不動繊毛におけるカルシウム動態を可視化するトランスジェニックマウスに、ノード流を欠失したマウス(iv/ivミュータント)を交配させることにより作成した。このマウスに対して、私たちが構築した顕微鏡システムを適応させることにより、「ノード流非依存的に光ピンセットによるメカニカルな刺激のみで10回に4回ほどの頻度で繊毛内カルシウム濃度上昇が起きる」ことを明らかにした。これは繊毛がメカニカルな刺激に反応するメカノセンサーであることを強く示唆している。 現在、この現象が左右軸決定に関与するシグナル経路にかかわるものであるか、とくにこの機械刺激により左右軸決定に関与するシグナル経路を活性化することができるかどうかの検証を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、ノード流の有り/無しと、光ピンセットによる機械刺激有り/無しの、合計4条件の実験を行い、繊毛がカルシウム応答を見せる割合を統計的に解析することにより、ノード不動繊毛がメカノセンサーであるか否かを厳密に証明できることを提案した。 本年度は、当初の計画通り、顕微鏡の構築を行うとともに、マウスの作成を終わらせることにより、この4条件すべての実験を開始することができた。 もっとも難しいと予想された実験系の構築や、時間がかかることが予想されていたマウスの作成を終わらせることができている。まだサンプル数は少ないものの、予想通りの結果がみられていることから、今後継続して実験を遂行していくことにより、2年間で期待していた結果が得られる見込みである。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、以下の2点を軸に実験を進め、「ノード不動繊毛はメカノセンサーか否か」という問題に決着をつける。 ①ノード流の有り/無しと、光ピンセットによる機械刺激有り/無しの、合計4条件の実験を行い、繊毛がカルシウム応答を見せる割合を統計的に解析する 上述の通り、すでにこれらの実験条件で実験を開始しており、今後1年間かけて継続してデータを取得する。最終的には統計的な有意差を検定する。これにより、繊毛が、メカノセンサーとして機能しているかどうかを明らかにする。 ②Pkd2ノックアウトマウスを用いたノード不動繊毛のカルシウムイメージングと顕微操作 Pkd2チャネルを介したシグナル経路が、左右軸決定に関与するシグナル経路であることが解っている。Pkd2ノックアウトマウスを用いることにより、現在測定されている機械刺激依存的な繊毛内カルシウム上昇が、左右軸決定に関与するシグナル経路にかかわるものであるかを明らかにする。
|