研究課題/領域番号 |
19K23768
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
入谷 亮介 国立研究開発法人理化学研究所, 数理創造プログラム, 研究員 (10843980)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 宿主・寄生者 / 適応進化 / 群集動態 |
研究実績の概要 |
寄生者による宿主操作が宿主の行動を改変する形質を進化させることで、群集・生態系に対して、どのような影響があるのかを理解するための数理モデルを構築する研究を実施中である。そのためには、(1)群集に関与するような種の従う常微分方程式を構築し、(2)その安定性を調べ、(3)さらに進化する形質である宿主操作について、宿主操作を司る遺伝子における突然変異個体が群集に侵入したときに、その遺伝子が群集で頻度を増加させられるかという、「進化侵入解析」を実施する必要がある。そのため、非常に複雑な数理モデルとなり、これら各ステップを着実に実施するための準備研究が必要となる。特に、進化する形質の有利性・不利性に関しては、どのような関数で、宿主操作の強度を表現するかという点において、一種の任意性がある。 本研究においては、これら解析を一つ一つ実施している。特に、宿主操作形質のなかでも、宿主の行動を高める形質、低める形質のどちらが進化するのかを調べることが必須であり、現在はその数理解析を実施中である。 また、本研究から発展した内容についても、考察を進めようとしている。特に、群集における宿主操作の意義として、バイオマスがいかに駆動されるかという点が実証研究によってすでに指摘されている点である。理論的に、生物の進化が、群集のバイオマスの流動に与える影響を解明することは、進化と生態系を結びつけるということのみならず、寄生者という、(体サイズも小さく)見逃されがちである生物たちが、群集において重要な役割を果たしていたということを予測する研究となるためである。そのような研究を実施することは、当初予定していた研究計画からさらに発展的な内容として位置付けられ、今後も重点的に研究することが必須である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数理モデルをすでに構築済みである。安定性に関する解析を行い、数値計算や、宿主操作形質を表現するための関数型として様々なものを用いて、予測結果が支持されるのかを試している。したがって、当初予定していた数理モデルの構築・解析にまで至っており、順調な進行であると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
残された課題のなかでも最も大きなものとして、宿主操作形質を表現するための関数型の選択が挙げられる。これは生物学的にも非常に重要なものであるため、文献調査をさらに進める必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの流行により、国外渡航が強く制限されてしまったため。ただし、今年度は規制が緩和される可能性が高いため、研究計画を遂行するための海外出張・学会発表を行なう予定である。
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