研究課題/領域番号 |
19K23770
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
瀬戸川 剛 筑波大学, 医学医療系, 助教 (80840785)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 行動決定 / 化学遺伝学 / 眼窩前頭皮質 / 線条体 / アカゲザル |
研究実績の概要 |
状況に応じて適切な行動を選択することは、私たちが豊かな生活を送るうえで欠かせない。申請者はこれまでに、眼窩前頭皮質が行動決定を行う上で重要な役割を担っていることを明らかにしてきた。本研究では眼窩前頭皮質―線条体の神経接続に着目し、化学遺伝学的手法を用いて当該経路の活動を操作することで動物の行動選択に与える影響を調べることを目的とした。 実験動物にはアカゲザルを用いた。行動課題として、サルに報酬である水が得られるまでに必要な作業量と最終的に得られる水の量を示すキューを2つ同時に提示しどちらかを選択させる行動選択課題を用いた。作業には簡単な視覚弁別試行を用い、キュー選択後はそのキューが示す回数だけ視覚弁別試行(1-4試行)を行うことで、報酬(水:1-4滴)を獲得することができる。本研究の最終的なゴールは、化学遺伝学的手法であるDesigner Receptor Exclusively Activated by Designer Drugs (DREADD)技術をサルに導入し、眼窩前頭皮質―線条体の活動を人為的に抑制した際に上記の課題の選択傾向が変化するかどうかを調査することである。 まず、2頭のアカゲザルに上記の行動課題の訓練を行った。数理モデルを用いた行動成績の解析の結果、サルは確かにより価値が高いキュー(作業量が少なく、報酬量が多いキュー)を選んでいることが確認できた。眼窩前頭皮質でDREADDを発現させる個所を決めるために、動物が行動決定課題を遂行中の眼窩前頭皮質より単一神経細胞記録法を用いてニューロン活動の記録を行った。その結果、線条体へ強い神経投射を送っていることが知られている眼窩前頭皮質の小領域において、動物の選択行動と相関を示すニューロンの活動を記録することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は動物への課題の訓練およびDREADD導入位置の確認まで終了し、当初順調に研究が進んでいたが、急な研究室閉鎖により実験を中断することを余儀なくされた。2020年度より新たな所属機関にて実験立ち上げを行っているが、COVID-19の影響で旧研究室より実験機材を運べず、セットアップが難航しているため。
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今後の研究の推進方策 |
第一に新しい所属において実験のセットアップを完了させる。次にサルに行動決定課題を学習させる。昨年度の予備実験においてDREADDを発現させる部位は決定しているため、課題の学習後は直ちに手術により眼窩前頭皮質へDREADDを導入する。DREADD発現後、線条体へリガンドであるCNOを局所注入することで眼窩前頭皮質―線条体の行動決定への影響を調査する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属していた研究室閉鎖に伴い、2019年度終わりの実験が滞ったため。次年度使用額である61889円は、DREADD実験において必須の薬物であるCNO(DREADDのリガンド)の購入費に充てる予定である。
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