状況に応じて適切な行動を選択することは、私たちが豊かな生活を送るうえで欠かせない。申請者はこれまでに、眼窩前頭皮質が行動決定を行う上で重要な役割を担っていることを明らかにしてきた。本研究では眼窩前頭皮質―線条体の神経接続に着目し、化学遺伝学的手法を用いて当該経路の活動を操作することで動物の行動選択に与える影響を調べることを目的とした。 実験動物にはアカゲザルを用いた。行動課題として、サルに報酬である水が得られるまでに必要な作業量と最終的に得られる水の量を示すキューを2つ同時に提示しどちらかを選択させる行動選択課題を用いた。作業には簡単な視覚弁別試行を用い、キュー選択後はそのキューが示す回数だけ視覚弁別試行(1-4試行)を行うことで、報酬(水:1-4滴)を獲得することができる。本研究の最終的なゴールは、化学遺伝学的手法であるDesigner Receptor Exclusively Activated by Designer Drugs (DREADD)技術をサルに導入し、眼窩前頭皮質―線条体の活動を人為的に抑制した際に上記の課題の選択傾向が変化するかどうかを調査することである。 一昨年までに、眼窩前頭皮質より単一神経細胞記録法を用いてニューロン活動の記録する予備実験を行い、DREADDを発現させる部位を決定した。昨年度は所属機関の変更に伴い実験のセットアップから行うこととなったが、COVID-19の影響で旧研究室より実験機材を運べず当初よりも計画に遅れが生じた。現在までに、実験機器のセットアップ、霊長類への遺伝子組換え実験の申請手続きおよび実験に使用するニホンザルの購入が完了し、行動課題のプログラミングを行っている状況である。
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