研究課題
本研究では、RhoA-“Rho-kinase”シグナルについて個体内での生理機能と分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。昨年度はRho-kinaseの阻害剤であるFasudilやRho-kinaseのドミナントネガティブ変異体を使用して、RhoA-“Rho-kinase”シグナルと学習・記憶の関係を調べた。本年度は昨年度作成したRho-kinaseの2つのアイソフォームRock1とRock2のダブルコンディショナルノックアウトマウスを大量に繁殖し、RhoA-“Rho-kinase”シグナルと学習・記憶の関係を受動回避学習試験により検討した。Rock1loxP/loxP Rock2loxP/loxP マウスの側坐核にアデノ随伴ウイルスAAV-CaMKⅡ-Creを注入し、受動回避学習試験を行ったところ、学習・記憶能力が有意に低下した。我々の研究室ではマウス脳線条体のスライスにKClやNMDAによる刺激を行い、14-3-3などのリン酸化タンパク質結合タンパク質を用いリン酸化基質を濃縮し、RhoAの制御タンパク質であるARHGEF2やARHGAP21、ARHGAP39などを同定した。受動回避学習試験において、電気ショック訓練後のマウスの側坐核を採取し、ARHGEF2、ARHGAP21やARHGAP39のリン酸化レベルをウェスタンブロットにて解析したところ、電気ショック負荷により側坐核におけるARHGEF2、ARHGAP21や ARHGAP39のリン酸化レベルが有意に上昇した。受動回避学習試験において、Fasudilが側坐核におけるRho-kinaseの活性上昇を阻害するかどうかを検証したところ、受動回避学習試験の電気ショック訓練の際に、Rho-kinaseの基質であるMYPT1のリン酸化が上昇し、そのリン酸化は20mg/kg Fasudilの前投与により抑制された。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Neurochemistry International
巻: 143 ページ: 104935~104935
10.1016/j.neuint.2020.104935