研究課題
大脳皮質5層から高次視床核への投射は、視床を介した大脳皮質間の情報伝達に重要であることが示唆されている。大脳皮質5層軸索が視床後核につくる巨大シナプス終末は、大脳皮質から視床への強力な入力を担う。我々はこれまでに、その巨大シナプス終末の形成には、大脳皮質5層軸索からのSNAP25を介した小胞放出が重要であることを示した(Hayashi et al., 2021)。本研究では、さらにシナプス終末の形態を後シナプス側で制御する分子を同定するために、生後1-3週の視床後核で発現が変化する遺伝子の同定を試みた。異なる生後齢の視床後核のRNAを抽出し、RNAシークエンシングによるトランスクリプトーム解析を行った。その結果、生後数日と比較して生後2-3週で発現が上昇する遺伝子と減少する遺伝子を同定した。その中で、細胞間接着因子や細胞外マトリックス、細胞骨格制御因子に注目して、視床後核の巨大シナプス終末の形成を制御する因子の候補とした。上記の候補因子の機能解析をする上で、視床後核に遺伝子を導入する必要がある。そこで子宮内穿孔法により、プラスミドを視床後核に導入する系を確立した。この系を用いて、トランスクリプトーム解析により同定した遺伝子群を過剰発現または発現抑制することにより、各遺伝子の機能を解析することが可能となった。現在、shRNAによる遺伝子ノックダウンおよびCRISPR-Cas9によるノックアウトを用いて、大脳皮質と視床後核の遺伝子操作による巨大シナプス終末形成の分子機構の解析を進めている。
すべて 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Cerebral Cortex
巻: 31 ページ: 2625-2638
10.1093/cercor/bhaa379
Journal of Comparative Neurology
巻: 529 ページ: 2189-2208
10.1002/cne.25085