研究課題
研究活動スタート支援
本研究ではマウスを用いて、大脳皮質5層から視床への投射がつくる特徴的な巨大シナプス終末の形成を制御する因子の同定を試みた。異なる生後齢のマウスの視床核からRNAを抽出し、RNAシークエンシングによるトランスクリプトーム解析を行った。その結果、生後2-3週で発現が増加または減少する遺伝子を同定した。その中で、巨大シナプス終末の形成を制御する可能性のある分子の候補を選出した。また、子宮内穿孔法を用いて視床の遺伝子操作を行う条件を設定した。現在、候補遺伝子の発現操作による機能解析を行っている。
神経発生学
大脳皮質5層からの入力を受ける視床領域は高次視床核と呼ばれ、感覚情報の統合を仲介する重要な働きをすることが示唆されてきた。しかし、その神経回路の形成過程については不明な点が多い。本研究で得られた成果は、今後、生後期の大脳皮質の活動に依存的した皮質下領域のシナプス成熟の機構を解明する上で重要である。類似のシナプス終末の構造は海馬にもあり、記憶の形成に重要である。本研究で得られた視床のシナプス終末形成制御の知見を活かすことにより、海馬の記憶形成の回路基盤についても理解が深まることが期待される。