研究課題
本研究では、薬剤耐性黄色ブドウ球菌を選択的に殺菌する抗菌ファージの開発を目的とした。申請者は、耐性菌を選択的に殺菌する抗菌ファージシステムとして、細菌の保有する適応免疫機構(CRISPR-Casシステム)の一つであるCRISPR-C2c2をファージに搭載することを考えた。まず初めに、C2c2をバクテリオファージに搭載した。この搭載には、黄色ブドウ球菌の病原性遺伝子塊(SaPIs)を利用した。SaPIは、黄色ブドウ球菌染色体上に存在するファージ様の構成因子を持つ移動性遺伝子領域であり、特定のファージ(ここでは、SaPIを誘発するファージなのでヘルパーファージと呼ぶ)の内部に入り込むことができる。我々は、SaPIがファージをハイジャックする特徴を生かし、C2c2をファージに搭載させることにした。具体的な手法としては、SaPI領域にC2c2を組み込んだ(SaPI-C2c2の作成)後に、マイトマイシンC添加でSOS応答を引き起こした。SOS応答はヘルパーファージとSaPI-C2c2の活性化を誘発し、SaPI-C2c2はヘルパーファージをハイジャックするため、C2c2を搭載した抗菌ファージが次々と生成されるはずであり、実際にSaPIを用いたCRISPR-C2c2の搭載に成功したことをトランスダクションアッセイにより確認した。また、C2c2搭載ファージの有効性を評価するために、MRSAを選択的に殺菌できるか否かを調べた。in vitroでは重層寒天培地上にMRSAを撒き、その上から抗菌キメラファージを添加、殺菌斑を確認することで、抗菌キメラファージが薬剤耐性黄色ブドウ球菌を選択的に殺菌することを確認した。
自治医科大学 感染・免疫学部門 細菌学分野 ホームページhttp://www.jichi.ac.jp/bacteriology/
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