研究課題/領域番号 |
19K23808
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
高橋 浩平 国際医療福祉大学, 薬学部, 助教 (90846411)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 潰瘍性大腸炎 / うつ病 / 脳腸相関 / 神経新生 |
研究実績の概要 |
脳腸機能の不均衡が潰瘍性大腸炎におけるうつ発症に関与していることを解明出来れば、腸内環境改善の新たな機能的役割を示すことになる。潰瘍性大腸炎を併発したうつ病モデル動物の確立並びに発症メカニズムの解明によって、より臨床に近いモデルを用いた抗うつ薬のスクリーニング並びに潰瘍性大腸炎とうつ病を一つの薬剤で治療出来るエコファーマシーの探索が可能であると考える。 モデル動物作製の際には3つの妥当性(表面的・構成概念的・予測的) を満たすことが条件になる。予備試験の段階でデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)処置7日目のマウスで潰瘍性大腸炎様所見並びにうつ様行動が認められ、うつ病を併発した潰瘍性大腸炎モデルとしての表面的妥当性に関しては満たしていることを見出している。 そこで、認められた潰瘍性大腸炎様所見並びにうつ様行動が、既存の治療薬において改善されるかどうかという予測的妥当性に関して検討した。潰瘍性大腸炎様所見に関しては治療薬として用いられているステロイドのデキサメタゾン投与によって改善されるかを検討し、うつ様行動に関しても既存の治療薬である三環系抗うつ薬のイミプラミンによって改善されるかを検討した。その結果、デキサメタゾンの投与によって潰瘍性大腸炎様所見並びにうつ様行動が、イミプラミンの投与によってうつ様行動のみが抑制された。 これらの結果より、DSSマウスは潰瘍性大腸炎並びにうつ病モデルとしての予測的妥当性を満たしていることが示唆された。さらに、腸内環境の改善がDSS誘発性うつ様行動を抑える要因になっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
うつ様行動を併発する潰瘍性大腸炎モデル動物であるDSSマウスが予測的妥当性を満たしていることを見出した為、当初の計画通り病態モデルの検討が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
DSS誘発性潰瘍性大腸炎様所見並びにうつ様行動の表面的妥当性及び予測的妥当性を満たすことを見出したので、構成概念的妥当性に関して検討する予定である。 脳腸相関の概念を基軸として、うつ病において重要な脳部位である海馬並びに潰瘍性大腸炎の発症部位である大腸に焦点をあてて検討する。潰瘍性大腸炎並びにうつ様所見が発現するDSS処置7日目に、大腸並びに海馬の炎症性サイトカインおよびα-シヌクレインをWesternBlot法により測定し、うつ様状態時における脳腸間の変化について明らかにする。さらに炎症性サイトカインが脳腸両領域において増加していた場合は、RT-PCR法を用いてmRNAの発現量に関して検討し、海馬で増加しているサイトカインが腸由来のものなのか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響で参加予定だった第93回薬理学会年会が誌上開催になったため、その旅費に充てていた助成金を次年度の研究費に繰り越すことになった。
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