本研究は、新規がん治療薬シーズ開発を志向し、ミトコンドリア非依存的にヒト腫瘍細胞をアポトーシスに誘導する高等植物由来ステロイド配糖体の作用メカニズム解明を主目的としている。申請者は、現在臨床医療において使用されているシスプラチンやエトポシドをはじめとする数種の細胞障害性抗がん剤がヒト腫瘍細胞に対してミトコンドリア依存的にアポトーシスを誘導することを明らかにしてきた。それに対し、申請者が高等植物より見出した数種のステロイド配糖体はミトコンドリアを介さずにヒト腫瘍細胞をアポトーシスに誘導していることが示唆された。このことから、申請者が見出したステロイド配糖体は既存の細胞障害性抗がん剤とは異なる作用メカニズムを有している可能性が示唆され、新たながん治療薬シーズ開発の契機になることが期待された。そこで、これらステロイド配糖体について、ヒト腫瘍細胞に対する詳細なアポトーシス誘導メカニズムの解明を目的に本研究を遂行した。ミトコンドリアを介さずにアポトーシスが誘導される際にかかわるアポトーシス誘導関連シグナルのうち、caspase類(caspase-8、caspase-12)、デスリガンド(FasL、TRAIL)などに着目し、ウエスタンブロッティングの手法やキット製品を用いて、各種最適な検出条件を繰り返し検討した。その結果、ポジティブコントロールを用いて数種のシグナルの検出条件が概ね確立された。そして、申請者が高等植物より得たステロイド配糖体を用いた検討にも着手する段階まで研究を進行させることができた。今後は、引き続き各種アポトーシス誘導関連シグナルの検出を行い、より詳細なアポトーシス誘導機序を明らかにしていく予定である。
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