研究課題/領域番号 |
19K23819
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
森谷 邦彦 東北大学, 大学病院, 助教 (40646999)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 遺伝子 / シグナル伝達 / 免疫学 / トランスレーショナルリサーチ |
研究実績の概要 |
JIAの一部の症例は乳児期に発症し、自己炎症性疾患との鑑別が困難で内科的治療への反応が悪く、難治性の症例が多い。その発症要因として遺伝的背景の影響が強いと考えられている。 研究者は、JIAとして診断されていた10歳女児のエクソーム解析を行い、IL-1レセプターアンタゴニストの欠損により起こる、常染色体劣性遺伝形式の自己炎症性症候群の1つであるDIRA(deficiency of the interleukin-1-receptor antagonist)と診断した。DIRAは生後1か月以内に重篤な膿疱症、骨髄炎を起こすが本症例はJIAとしてステロイド治療が行われており、臨床的に軽症である原因を解析したところ患者の変異体(R26X)をHEK-T細胞にトランスフェクションし、C末を認識する抗体でウェスタンブロッティングを施行したところWTのIL-1RNよりもsmall sizeのバンドを検出し2nd メチオニンからのre-initiationが起こっていること、またmutant(R26X)を含んだFusion proteinはIL-1刺激を抑制していることを示し、これによりlate-onsetの臨床経過を示したと考えられ、論文発表した(Moriya K et al. J Clin Immunol. 2020 Mar 17. doi: 10.1007/s10875-020-00770-1)。 また、難治性JIAの患者3家系、1家系においてエクソーム解析により、各々新規責任遺伝子を同定した。学会発表、論文投稿すべく機能解析を行っていく。 新規責任遺伝子の同定を含めたJIAの原因遺伝子同定を試み、それぞれの遺伝子異常に応じた治療戦略の構築を図る基礎を作りたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では難治性かつ非典型的JIA、家族歴ありなどから症例を蓄積し、その臨床的および遺伝学的解析を行っている。 まず、late onset DIRAの2症例、そのメカニズムについて論文化することができた。 また、難治性JIAの患者3家系、1家系においてエクソーム解析により、各々新規責任遺伝子を同定することができ、担当医の先生や患者さんの協力が十分であり、患者検体を用いた解析を含めた機能解析を行っている。 引き続き、アレイCGH法を用いた網羅的解析を行い、健常者と異なる発現パターンを示す領域をチェックし、エクソーム解析を用いて確認する。調査対象を徐々に広げ、後々は全国のJIAの検体を収集して、その有病率や遺伝子変異の種類・頻度などを推定し、遺伝子変異に即した治療方針の提言を行うことを最終目標としている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、新規遺伝子変異解析症例のまとめを英文論文として作成し、論文投稿を行い、受理のための必要な方策を行う。 当初の本研究計画に従って、アレイCGH法とエクソーム解析を行い、新規原因遺伝子の検索を行う。その後に新規原因遺伝子候補が発見された場合には未解決な分子病態の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
既知遺伝子に変異を同定できない症例および家系において、当初から予定していたアレイCGH法とエクソーム解析による新規原因遺伝子の探索を開始したところであるが、まだ全症例の解析が完遂していないため。
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