本研究では、肛門管の壁を構成する筋層構造を肉眼解剖および免疫組織学的に解析した。研究の結果、これまで縦に走る一様な平滑筋線維から成ると考えられていた「縦走筋層」に、平滑筋線維の密性領域と疎性領域が共在していることが明らかになった。密性領域では平滑筋線維が束になって集合し、径1.0-1.5mm程度の円柱状構造を作っていた。その密性領域を内方および外方から囲むように平滑筋線維が疎に散在し、疎性領域を成していた。このように、これまで注目されてこなかった肛門管の平滑筋に形態の多様性を見出した。本研究の解剖学的知見によって肛門管MRIの詳細な読影が可能となり、直腸癌や痔瘻の術前後評価の向上が期待される。
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