研究課題
VPS35LはVPS29、VPS26Cよりなる三量体のRetriever複合体のコアタンパクである。このRetriever複合体はエンドソームにおいて細胞膜タンパクのリサイクリングにおいて重要な役割を果たし、主にNPXYモチーフを有する細胞膜タンパクの発現量を維持する役割を担う。従って、VPS35Lを細胞株で欠損させることにより、それらの細胞膜タンパクの発現量が低下する。我々は中枢神経系、筋骨格系、心臓などの先天性形成異常を呈した家族例から、VPS35L遺伝子に両アレルの機能喪失型変異を同定し、Ritcher-Schinzel症候群(別名3C症候群)の新規の原因遺伝子として報告した(2020、J Med Gent)。また、本研究期間中に国際共同研究により症例集積を務め、同様の症状を有する患者のエクソーム解析により新たに3症例を同定し、臨床的な多様性に関して報告した(2023、J Med Genet)。これら臨床的特徴の背景に存在する分子メカニズムを明らかにするため、VPS35L欠損細胞株を作成した。特に患者で幼少期からみられた脂質異常症の分子学的背景を明らかにするため、NPXYモチーフを有するLRP1、LDLRに着目した。VPS35L欠損細胞では両蛋白の細胞膜における発現量の低下を認め、そのため細胞内へのLDLの取込みの低下を認めた。患者で見られた脂質異常症はこのメカニズムにより脂質の細胞内への取込みが障害された結果と考えられた(2023、J Med Genet)。また、VPS35Lの完全欠損マウスを世界で初めて樹立し、胎児期早期(E7.5-E8.5)に死亡することを明らかにした。また、患者変異ノックイン(KI)マウスや、中枢神経・筋骨格系組織特異的VPS35L欠損マウスモデルを作製し、個体レベルでの3C症候群の病態解析系を樹立した。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
J Med Genet.
巻: 60(4) ページ: 359-367
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