細胞内外の物質輸送や情報伝達の役割を担う膜タンパク質の発現リズムの変化は、栄養バランスの崩壊に伴う代謝性疾患の発症につながる。本研究では、膜タンパク質の発現を下支えする足場タンパク質Membrane scaffolding protein (仮称: MSP)の発現リズムを見出し、脂肪酸トランスポーターFATP5の局在リズム形成に影響を及ぼすことを明らかとした。細胞内に発現しているFATP5の発現量は24時間を通じて一定であったが、細胞膜における発現には24時間周期の変動が観察された。 足場タンパク質の発現リズムは時計遺伝子によって転写段階で制御を受けていることを見出した。時計遺伝子Per2変異マウスにおいて、足場タンパク質の発現リズムが消失していた。正常モデルマウスでは足場タンパク質とFATP5が時刻依存的に相互作用を示したが、変異マウスでは時刻間の際が消失していた。変異マウスの肝臓細胞膜にはFATP5の発現が常に高値を示し、脂肪酸の取り込みが過剰におこなわれていることを明らかとした。 さらに、時計遺伝子の発現リズムが崩れるモデルマウスを摂食時刻を変化させて作成したところ、足場タンパク質の発現リズムが消失することを明らかとした。作成した体内時計変調モデルマウスのFATP5の発現量を測定すると、細胞膜での発現リズムが変化し、肝臓中に脂肪酸が蓄積することを見出した。これらのことから、足場タンパク質の発現リズムの変調が、トランスポーターの機能低下を介して代謝性疾患の発症に繋がることが示唆された。
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