LRRC8がヘテロ化することで細胞容積を感受するようになる仕組みの理解にむけて、5種類あるLRRC8アイソフォームのうち、有機オスモライトの特異的な透過を担うLRRC8DとLRRC8が活性を有するために必須なアイソフォームであるLRRC8Aを対象に電気生理解析および立体構造解析の両方の面から研究を開始した。電気生理解析については、当初はアフリカツメガエル卵母細胞を用いた二電極膜電位固定法により測定することを考え電流を安定して測定するための条件を検討していたが、いずれもうまく測定することができなかった。そのため方針を変え、過去にLRRC8における測定実績の高いHEK293T哺乳類細胞やHEK293T細胞でかつ内在性LRRC8を全て欠損した株を使用する方針に変更し、現在はバッファー組成等の条件を検討中である。 立体構造解析については、LRRC8Dアイソフォームについて、申請者がLRRC8Aホモ六量体の構造を決定した際の方法にならい、昆虫細胞からLRRC8Dを精製しクライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析法を行った。その結果、LRRC8Dホモ六量体の構造を決定することに成功した。LRRC8Dホモ六量体の構造では、過去に申請者が決定したLRRC8Aホモ六量体では確認できなかったイオン透過孔に向いたN末端の細胞内ヘリックスが確認された。また、このヘリックスの変異体を作成し電気生理解析を行ったところ、イオン透過に関与することが示唆された。この内容は2020年にCommunications Biology誌にて発表した。
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