嚥下の中枢パターン発生機構の解析

2020 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 19K23834
• 研究機関: 昭和大学
• 研究代表者: 守谷 崇 昭和大学, 歯学部, 助教 (70849059)
• 研究期間 (年度): 2019-08-30 – 2022-03-31
• キーワード: 嚥下 / 電気刺激 / ラット

研究実績の概要

嚥下の神経回路の詳細な走行と神経機構、および呼吸の抑制メカニズムを明らかにすることを目的に体外循環法を適用した呼吸・循環中枢の影響を受けない嚥下の動物実験モデルを用い実験を行った。私のこれまでの実験活動として、ACE阻害薬のイミダプリルの投与によって注水嚥下時の迷走神経活動が増大した。この結果により、イミダプリルを投与することで咽頭筋の活動促進に関与していると考えた。また、嚥下は主に上喉頭神経や舌下神経に刺激が伝達されることで嚥下に関与している筋が活動していると考えられている。そこで、上喉頭神経と舌下神経のいずれかの神経を切断した状態で、嚥下活動にどのように影響を与えるのか評価し、イミダプリルを投与することによる変化を評価した。
2019年度4月～2020年3月研究実績
まず、舌下神経を切断した状態で嚥下活動を評価した。舌下神経切断前後で注水嚥下時の嚥下関連神経活動が有意に低下したことが明らかになった。また、イミダプリルを投与しても嚥下時の神経活動に変化を認めなかった。このことから、注水嚥下時の神経活動において、舌下神経の活動は重要な作用をしていると考えられる。
2020年4月～2021年3月研究実績
続いて、上喉頭神経を切断した状態で嚥下活動を評価した。上喉頭神経切断前後で注水嚥下時の嚥下関連神経活動が有意に低下したことが明らかになった。また、イミダプリルを投与することで嚥下時の神経活動が有意に増大した。
これらの実験から、イミダプリルの投与による嚥下神経活動の増大には舌下神経が重要な作用をしていると考えられる。今後、リアルタイムイメージング（GCaMP）を用いてsw-CPGの詳細な存在部位の解明をする上でより詳細な領域での神経細胞の活動を観察することが可能になる。そして、これらの活動を解明することで嚥下の神経回路の詳細な走行と神経機構を明らかにすることにつながると考えている。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2020年12月までは順調に実験を進められてきたが、COVID-19の影響により海外からの薬剤の納入が遅れている。
そのため、本実験で用いている嚥下の動物実験モデルである除脳動脈灌流標本の作成が困難な状態であるため実験が滞っている状況にある。

今後の研究の推進方策

今後、上喉頭神経・舌下神経に電気刺激を行い嚥下時の神経活動の変化を評価を行う。さらにイミダプリルを投与することで注水刺激時と同様の結果を示すのか検証する。その結果をみた上で、上喉頭神経・舌下神経に対しリアルタイムイメージング（GCaMP）を用いてsw-CPGの詳細な存在部位の解明をすることを考えている。
この実験により、詳細な領域での神経細胞の活動を観察することが可能になる。そして、これらの活動を解明することで嚥下の神経回路の詳細な走行と神経機構を明らかにすることにつながると考えている。

次年度使用額が生じた理由

実験計画の遅れが生じているため、次年度以降の試薬や実験動物等の購入に充当する。