嚥下の神経回路の詳細な走行と神経機構、および呼吸の抑制メカニズムを明らかにすることを目的に体外循環法を適用した呼吸・循環中枢の影響を受けない嚥下の動物実験モデルを用い実験を行った。私のこれまでの実験活動として、ACE阻害薬のイミダプリルの投与によって注水嚥下時の迷走神経活動が増大した。この結果により、イミダプリルを投与することで咽頭筋の活動促進に関与していると考えた。また、嚥下は主に上喉頭神経や舌下神経に刺激が伝達されることで嚥下に関与している筋が活動していると考えられている。そこで、上喉頭神経と舌下神経のいずれかの神経を切断した状態で、嚥下活動にどのように影響を与えるのか評価し、イミダプリルを投与することによる変化を評価した。 2019年4月~2021年3月研究実績 舌下神経、上喉頭神経を切断した状態で嚥下活動を評価した。上喉頭神経のみを切断前後で注水嚥下時の嚥下関連神経活動が有意に低下したことが明らかになった。また、イミダプリルを投与することで嚥下時の神経活動が有意に増大した。そして、舌下神経を切断した状態で嚥下活動を評価した。舌下神経切断前後で注水嚥下時の嚥下関連神経活動が有意に低下したことが明らかになった。また、イミダプリルを投与しても嚥下時の神経活動に変化を認めなかった。これらの実験から、イミダプリルの投与による嚥下神経活動の増大には舌下神経が重要な作用をしていると考えられる。 2021年度4月~2022年3月研究実績 注水刺激による嚥下活動の評価から、続いて行った実験として舌咽神経、上喉頭神経に対し電気刺激を行い嚥下誘発させイミダプリルを投与し注水刺激時と同様の反応を示せるか評価している。現段階では、上喉頭神経にのみ嚥下を誘発させることができるが標本作成や実験の煩雑さから標本の良好な状態を保てない問題に直面している。今後、創意工夫を凝らしこの問題を解決しいく所存である。
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