研究課題/領域番号 |
19K23838
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
岩村 千秋 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任講師 (10513062)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 免疫記憶 / 慢性炎症 / 組織常在性記憶T細胞 / CD69 / アレルギー性気道炎症 |
研究実績の概要 |
正常野生型マウスにHouse dust mite(HDM)溶液を長期間投与することにより、喘息患者の生理的病態に類似した慢性気道炎症モデルマウスを作成することができる。CD69欠損マウスにHDMによる慢性気道炎症反応を誘導したところ、野生型マウスに比べて、肺の炎症の程度、気道過敏性、並びに慢性気道炎症の指標となる肺線維化の進行はすべて低下していることが分かった。この結果はCD69の発現が慢性気道炎症の増悪に寄与することを示している。また野生型マウスまたはCD69欠損マウスにHDMを経鼻投与し、その後の肺TRMの数を調べると、野生型では顕著にそれが増加しているのに対し、CD69欠損マウスではその増加が認められなかった。これらの結果からCD69は記憶CD4T細胞の発生または維持に必要であり、慢性型アレルギー性気道炎症の発症に関与していると考えられる。さらにCD69がTRMの機能に与える影響を調べるため、CD69陽性または陰性のTRMをHDMで処置したマウスの肺から調整し、サイトカイン産生を調べた。その結果CD69陽性のTRMは陰性のものよりも好酸球を誘導するIL-5の産生が顕著に多かった。したがって、CD69はTRMだけでなく機能にも影響を与えていることが明らかになった。CD69のリガンドとして我々はすでにMyl9を過去に報告している。そこでHDMにより慢性炎症を誘導したマウス肺でのその発現を調べた。正常肺ではMyl9はほとんど観察されなかったが、炎症の誘導により特にiBALT近辺にMyl9の発現が認められた。したがって、第3次リンパ器官であるiBALTにおけるMyl9がTRMの形成・維持に必要である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
およそ研究計画通りに進行しているため。
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今後の研究の推進方策 |
1. 慢性気道炎症におけるCD69陽性TRMの関与 CD69陽性または陰性TRMではサイトカインの産生パターンが異なっていたため、何らかの機能の違いがあると予想される。そこでより詳細な解析のためにTRM発現遺伝子の網羅的発現解析を相互作用する周辺環境を変え比較して行う。 2. 慢性炎症反応におけるCD69リガンドの役割 炎症肺においてCD69のリガンドであるMyl9の発現が強く認められたことから、CD69陽性TRMの発生や維持にMyl9が関与していると考えられる。そこで抗Myl9抗体を慢性アレルギーマウスモデルに投与して、CD69とMyl9の結合を阻害することにより、TRMの形成に影響を与えるのか調べる。また免疫染色によりMyl9の集積様式や量を調べる。そして多重蛍光免疫染色により、Myl9とTRMの相互作用が認められるか1分子の特定解析が可能な高解像度顕微鏡を用いて検討する。 3. TRMにおけるCD69依存的S1P1の検討 S1Pは胸腺や二次リンパ器官からT細胞の流出などリンパ球の循環に重要な役割を担っていることが知られている。CD69はそのレセプターであるS1P1と結合しており、その機能を阻害することでリンパ球が血流に流出するのを防いでいる。そこでCD69がTRMにおいてもS1P-S1P1受容体結合阻害によりTRMを組織に留めているのか遺伝子改変マウスを用いて明らかにする。
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