研究課題/領域番号 |
19K23842
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小林 伸英 金沢大学, 医学系, 助教 (30712799)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | M細胞 / トランスサイトーシス / マクロピノサイトーシス / 粘膜免疫 / ボツリヌス毒素 |
研究実績の概要 |
Microfold (M) 細胞は粘膜リンパ組織を覆う上皮に存在し、管腔内の抗原を直下の免疫細胞へと受け渡すことによって免疫応答を誘導する。一方で、M細胞はサルモネラ菌やボツリヌス毒素などの病原因子の侵入経路ともなっている。しかしながら、M細胞による抗原や病原因子の輸送の分子機構には不明な点が多く残されている。申請者は、M細胞に高発現する遺伝子であるPleckstrin homology (PH) ドメイン含有ファミリー分子(以下M-Plek)に着目し、培養細胞においてM-Plekがマクロピノサイトーシスを促進する作用を持つことを見出している。本研究では、M-Plek遺伝子欠損マウスを用い、M細胞の輸送系におけるM-Plekの役割と、粘膜免疫と病原因子侵入における意義を解明する。 当該年度は、M-Plek欠損マウスを用いてその表現型を解析した。マクロピノサイトーシスは、細胞外液ごと比較的大きな可溶性分子を取り込む機構である。そこで、可溶性分子の検出系としてボツリヌス毒素に着目した。ボツリヌス毒素は複合体として産生され、L毒素(500 kDa)はボツリヌス神経毒素、無毒成分、Hemagglutinin (HA)から構成される。L毒素はHAがM細胞特異的に発現する受容体GP2に結合することで体内に取り込まれる。一方、HAを持たず細胞付着性がないM毒素(300 kDa)は取り込み経路が不明であるが、受容体非依存的に取り込まれると考えられる。そこで、精製ボツリヌス毒素をM-Plek欠損マウスに経口投与し、食餌性ボツリヌス症の感受性を比較検討した。その結果、毒素の取り込みが抑制されるとの予想に反し、M-Plek欠損マウスではM毒素に対して野生型と比較して強い感受性を示した。このことから、M-Plekは経口摂取したボツリヌス毒素に対して防御的に機能していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度はM-Plekの生理的意義を明らかにするために、M-Plek欠損マウスの解析を行い、ボツリヌス毒素に対して強い感受性を示す事を明らかにした。M-Plekはマクロピノサイトーシスに寄与すると考えらえることから、M-Plek欠損マウスではM細胞によるボツリヌス毒素の取り込みが抑制され毒素感受性が低くなると想定していたが、M-Plekにはこれまでの予想とは異なる生理的機能があると考えられる。当初の予想とは反する結果となったものの、これまで全く不明であったM-Plekの生体における役割を明らかにする上での足がかりを得ることができたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析でM-Plekはアクチン骨格と相互作用することから、M-Plek 欠損によってM細胞の形態が変化した結果M細胞周辺のタイトジャンクションが破綻し透過性が亢進した可能性がある。また、我々が作製したM-Plek欠損マウスは全身欠損であることから、M細胞以外の細胞が発現するM-Plekがボツリヌス毒素に対して防御的に機能している可能性がある。 次年度はM-Plek欠損マウスにおける腸管透過性を解析するとともに、骨髄キメラマウス等を用いてM細胞以外の血球系の細胞が病態に寄与する可能性を検討し、そのメカニズムを明らかにする。
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