研究課題
本研究の目的は、急性心筋炎の発症や劇症化進展機序において、免疫チェックポイント分子であるPD-1およびPD-L1の発現が関与しているとの仮説のもとそれを検証し、さらには心筋炎に対する免疫応答を介した特異的な心筋炎治療法の開発へ繋げることである。本研究ではまず最初に、心筋病理組織を用いた評価を行った。当院へ入院した急性心筋炎患者15名の心筋病理標本(パラフィン標本)を用いて、PD-1およびPD-L1を含めた、各種免疫細胞に特異的なマーカー(CD3、CD4、CD8、CD20、CD68、Perforin、TIA-1)に対する免疫染色を行い、陽性細胞率を計測した。さらに、対象患者のうち10名は、経時的に複数回心筋生検を行っていることから、病理標本から得られた計測データとカルテ上の臨床データ(理学所見、血液検査、心臓超音波検査)との経時的な相関を検証中である。一方、自己免疫機序が関与していると考えられた、劇症型心筋炎の症例を経験したため、論文報告をした(Hiraiwa H et al. Fulminant Myocarditis with Myositis of Ocular and Respiratory Muscles: A Case Report. Nagoya J Med Sci. 2020 in press)。心筋病理標本の免疫染色では、CD4、CD8陽性Tリンパ球の心筋へのびまん性浸潤を認め、PD-1、PD-L1の発現を認めた。本症例を含む新規症例では末梢血の凍結保存を行っており、保存検体を用いたフローサイトメトリーによる免疫細胞数の計測や血中サイトカインの測定を実行中である。
4: 遅れている
研究開始後、新規に登録された心筋炎の患者数が予想された数よりも少なく、収集できた心筋生検検体および末梢血検体サンプルが少なかった。このため、新規患者での前向きの解析を大きく進めることができなかった。一方、これまでの心筋炎患者の保存検体(心筋病理標本)を用いた検討を並行して進めている。
本研究では引き続き、前向きに新規症例を登録、サンプルを収集し、保存検体(心筋生検検体、末梢血検体)を用いた、フローサイトメトリーによる免疫細胞数の計測や血中サイトカインの測定を進めていく方針である。一方、現在進行中である、これまでの心筋炎患者の心筋病理組織を用いた計測および臨床データを合わせた検討も並行して進めていく方針である。
初年度の研究進行の遅れに伴い、次年度へ持ち越しとしている。引き続き、免疫染色やフローサイトメトリーによる計測等にあたり、物品購入や機器利用に伴う費用として使用する予定である。
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Nagoya Journal of Medical Science
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