研究課題
本研究開始後、新規の心筋炎入院患者の数が想定した数よりも少なく、収集できた心筋生検検体および末梢血検体サンプルが非常に少なかったため、研究計画一部を変更し、まず、過去の心筋炎患者の保存検体(心筋病理標本)を用いた検討を行った。現在、心筋病理組織を用いた評価および検証を進行中である。当院へ入院した劇症型心筋炎患者18名(33検体)の心筋病理標本を用いて、PD-1およびPD-L1、また、細胞傷害性T細胞、制御性T細胞を同定すべく、特異的なマーカ(CD4、CD8、FoxP3)に対する免疫染色を行った。患者背景として、18名のうち、2名は免疫チェックポイント阻害薬使用に伴う合併症としての劇症型心筋炎・血管炎でありいずれもリンパ球性であった。残り16名のうち、リンパ球性心筋炎が13名、好酸球性心筋炎が1名、巨細胞性心筋炎が1名であった。生存退院が10名、退院時死亡が5名、左室補助人工心臓の植え込みに至ったものが1名であった。生存退院群と死亡群でPD-1、PD-L1の染色の程度、またCD4、CD8、FoxP3の陽性細胞の比率の違いについて、検証中である。また、16名のうち9名は複数回心筋生検を行っており、経時的な染色比率の変化についても検証中である。さらに研究期間中に、自己免疫機序が関与していると考えられた、劇症型心筋炎の症例を経験したため、論文報告をした。(Hiraiwa H et al. Fulminant myocarditis with myositis of ocular and respiratory muscles. Nagoya J Med Sci. 2020 Aug;82(3):585-593. doi: 10.18999/nagjms.82.3.585.) 本症例を含め、病理標本から得られたデータと患者背景を含む臨床データとの関連についても検証中である。
4: 遅れている
本研究の目的は、急性心筋炎の発症や劇症化進展機序において、免疫チェックポイント分子であるPD-1およびPD-L1の発現が関与しているとの仮説のもとそれを検証し、さらには心筋炎に対する免疫応答を介した特異的な心筋炎治療法の開発へ繋げることである。本研究開始後、新規の心筋炎入院患者の数が想定した数よりも少なく、収集できた心筋生検検体および末梢血検体サンプルが非常に少なかったため、新規患者での前向きの解析を大きく進めることができなかった。このため、本研究を進めるにあたり、研究計画一部を変更し、まず、過去の心筋炎患者の保存検体(心筋病理標本)を用いた検討を行う方針とした。
本研究は、研究計画一部を変更し、現在、心筋病理組織を用いた評価および検証を進行中である。当院へ入院した劇症型心筋炎患者18名(33検体)の心筋病理標本を用いて、PD-1およびPD-L1、また、細胞傷害性T細胞、制御性T細胞を同定すべく、特異的なマーカ(CD4、CD8、FoxP3)に対する免疫染色を行った。患者背景として、18名のうち、2名は免疫チェックポイント阻害薬使用に伴う合併症としての劇症型心筋炎・血管炎でありいずれもリンパ球性であった。残り16名のうち、リンパ球性心筋炎が13名、好酸球性心筋炎が1名、巨細胞性心筋炎が1名であった。生存退院が10名、退院時死亡が5名、左室補助人工心臓の植え込みに至ったものが1名であった。生存退院群と死亡群で、PD-1、PD-L1の染色の程度、またCD4、CD8、FoxP3の陽性細胞の比率の違いについて、検証中である。また、16名のうち9名は複数回心筋生検を行っており、経時的な染色比率の変化についても検証中である。PD-1/PD-L1の陽性比率、またCD4陽性FoxP3陽性細胞/CD8陽性細胞比率と、患者の生存死亡との関連、また、病理データの経時的な変化と臨床データとの関連を引き続き検証していく。
次年度使用額36791円は、これまでの結果をまとめ、論文投稿にかかる費用として使用する予定である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Nagoya J Med Sci.
巻: 82(3) ページ: 585-593
10.18999/nagjms.82.3.585.