リンパ球性の劇症型心筋炎(FM)患者におけるCD4、CD8、FoxP3またはPD-1陽性T細胞数、および心筋細胞におけるPD-L1の発現と予後への影響を検討した。2018年6月から2020年3月までに入院したFM患者16名について解析した。フォローアップ期間の中央値は140日であった。心イベントは、心臓死と左室補助循環装置(LVAD)の植込みの複合と定義した。発症時に心筋生検により採取した心筋組織標本に対して、CD4、CD8、FoxP3、PD-1、PD-L1の免疫染色を行った。年齢中央値は52歳、男性7名、女性9名、7名で心イベントを認めた(院内死亡6名、LVAD植込み1名)。心イベント群と心イベントなし群の比較ではCD4+T細胞数に有意差はなかったが、CD8+T細胞数およびCD8+/CD4+T細胞比は心イベント群で有意に高かった(P=0.048およびP=0.022)。FoxP3+T細胞数は心イベント群で多かった。PD-1+細胞数には両群間に有意差はなかったが、心筋細胞のPD-L1発現は心イベント群で高かった。Kaplan-Meier生存解析では、CD8+T細胞数高値群(P=0.012)、PD-L1高発現群(P=0.049)で生存率が有意に低かった。さらにCD8+T細胞数とPD-L1発現量に基づき、CD8high-PD-L1high、CD8low-PDL1high、CD8low-PD-L1lowの3群に分けたところ、CD8high-PD-L1high群は予後が最も悪かったが、CD8lowPD-L1high群は有意に予後が良好だった(P=0.041)。FM患者において心筋でのCD8+T細胞またはPD-L1の高発現は予後不良因子である可能性がある。さらに、CD8+T細胞とPD-L1の発現を組み合わせることで、FMにおける心イベントのリスク層別化が可能になる可能性が示唆された。
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