研究課題/領域番号 |
19K23849
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
水島 大貴 自治医科大学, 医学部, 助教 (50843455)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 節足動物媒介感染症 / ハマダラカ / サシチョウバエ / マラリア / リーシュマニア / 糖類 |
研究実績の概要 |
マラリアやリーシュマニア症は、ヒトに深刻な症状を呈する吸血昆虫媒介感染症である。それらの病原体はそれぞれ感染可能な吸血昆虫が決まっているが、どのような因子によって規定されているかは未だ不明である。本研究では、病原原虫の発育・ヒト感染能力を獲得する場である吸血昆虫の腸内に着目し、腸内環境を改変する糖類を用いて感染の成否を規定する因子を明らかにする。本年度の研究実績の概要は以下の通りである。 1)マラリア原虫を媒介するハマダラカの生存に悪影響を与えない糖類を選抜するため、単糖類、オリゴ糖、糖アルコール類をそれぞれ混合した餌糖液を吸血昆虫に与え、5つの糖類が吸血昆虫の生存率を有意に低下させることを明らかにした。リーシュマニア原虫を媒介するサシチョウバエに対しても同様に解析を進めている。2)マラリア原虫の発育に悪影響を与えない糖類を選抜するため、マラリア原虫のin vitro培養における選抜条件を検討し、選抜実験に着手している。3)一方でリーシュマニア原虫の発育に対する糖類の影響について解析したが、いずれの糖類で悪影響はないことを明らかにした。4)サシチョウバエ体内におけるリーシュマニア原虫の発育・増殖能の評価系を確立するため、ルシフェラーゼ発現リーシュマニア原虫を用いてin vitroで検討を行い、ルシフェラーゼによる検出・定量が可能であることを明らかにした。In vivoでの検出・定量性について解析するため、リーシュマニア原虫とサシチョウバエの感染実験を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
吸血昆虫及び病原原虫に対して悪影響を与えない糖類の選抜は着実に進行している。これらの結果は、選抜された糖類の中腸環境に与える影響を網羅的に解析する上で必要不可欠なものである。また、ルシフェラーゼアッセイを用いた吸血昆虫体内における病原原虫発育の評価系についても確立しつつある。ルシフェラーゼアッセイを用いずとも吸血昆虫体内における病原原虫発育の評価は可能である。しかし、多くの糖類を用い、多くの検体を解析する必要がある本研究課題においては、短時間の操作、高感度検出可能なルシフェラーゼアッセイが有効である。現状、in vitroでの評価に留まっているが、今後、in vivoでも評価できるか検討し、糖類によって改変された中腸での病原原虫の発育を解析する。
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今後の研究の推進方策 |
吸血昆虫及び病原原虫に対して悪影響を与えない糖類の選抜を完了させるとともに、ルシフェラーゼアッセイを用いた吸血昆虫体内における病原原虫発育の評価系を確立する。 選抜された糖類の摂取により変化が予想される中腸細菌叢について、次世代シークエンス解析によりその群集構造を明らかにする。また、その時の病原原虫感染に関与する中腸免疫遺伝子の発現量と上記評価系による病原原虫発育を解析する。細菌群の優劣、免疫分子の動態、病原原虫の発育におけるそれぞれの変化を比較解析することで、吸血昆虫中腸における病原原虫の感染成否を規定する因子の特定が期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において、糖類を摂取させた吸血昆虫の中腸細菌叢について次世代シークエンス解析をする予定であったが、吸血昆虫の飼育状況に合わせてサンプルを調製したため、次年度に持ち越されることとなった。そのため、当該年度分と本年度分の次世代シークエンス解析を合わせて行う予定である。
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