研究課題/領域番号 |
19K23855
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
深野 顕人 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 研究員 (80848531)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | B型肝炎ウイルス / NTCP / 多量体 / 内在化 / 侵入 / 感染 |
研究実績の概要 |
B型肝炎ウイルス(HBV)は感染受容体である胆汁酸トランスポーター(NTCP)に吸着した後、細胞内へ侵入すると報告されている。しかし、HBVが細胞内に侵入する内在化メカニズムの全貌は未だ解明されていない。これまでに、そのHBV内在化にNTCPの多量体形成が関与することを明らかにしてきており、本研究ではHBV内在化におけるNTCP多量体化の必要性を解析することで、HBV内在化メカニズムの解明を目指している。既に同定したNTCPの多量体化に関わると考えられるタンパク質領域から、特に重要なアミノ酸を特定することができた。そして、さらにそのアミノ酸をアラニン置換することで、多量体形成しないNTCP変異体の作製に成功した。このNTCP変異体を強制発現させた細胞に対して、HBVは吸着できるが、その感染は強く阻害されることが明らかとなった。この結果は、NTCPの多量体形成がHBVの内在化に重要な役割を持つことを示唆しており、HBV感染機構の一端を明らかにする重要な所見であると考えられる。また、既に同定しているHBV内在化阻害剤のトログリタゾンは、NTCPに直接結合することによりNTCPの多量体化を妨げ、HBV内在化を阻害することを明らかにした。これらの結果より、次年度NTCP多量体化とHBV内在化の関連をより詳細に解析する上で、重要な所見及び有用な材料を得ることができたと考える。 上記の研究成果は国内外の学術集会で筆頭演者として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
精力的に研究に取り組み、NTCP多量体形成に重要なアミノ酸を特定するとともに、多量体形成しないNTCP変異体を作製することができた。また、HBV内在化阻害剤のトログリタゾンが、NTCPに直接結合することによりNTCP多量体形成を阻害することを明らかにした。これらの結果は、次年度HBV内在化におけるNTCP多量体形成の必要性を解析する上で極めて重要な知見及び材料であるため、順調に進展したと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究結果より、NTCP多量体化に重要なアミノ酸を特定し、多量体形成しないNTCP変異体を得ることができた。次年度では、HBV内在化におけるNTCP多量体形成の必要性を解析し、HBV内在化メカニズムの解明を目指す。まずは多量体化しないNTCP変異体を過剰発現することにより、HBV感染および内在化への影響を評価する。そして、HBVの受容体共役因子である上皮成長因子受容体(EGFR)が媒介する内在化と、NTCP多量体化によるHBV内在化はどちらが上流または下流かを、近接ライゲーションアッセイ(PLA)や共免疫沈降法により解析する。 これらによって、未だ不明な点を多く残すHBV内在化メカニズムの一端を明らかにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)184,448円の未使用額が生じたが、翌年度に使用する事が効率的と考えたため、令和2年度に持ち越した。 (使用計画)184,448円の未使用額は消耗品購入等にあてる。
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