研究実績の概要 |
① 野生型マウス(WT)と各種トリプトファン代謝酵素ノックアウトマウス(Ido1-KO, Ido2-KO, KMO-KO)を用いて70%部分肝切除モデルを作製し、肝再生時における肝実質細胞の増殖能の変化と肝幹細胞の出現部位を組織免疫染色を用いて評価した。肝幹細胞の出現や量的変化は認めないが、Ido2-KOマウスにおいて肝実質細胞の増殖を伴う肝再生の促進が確認された。 ② WTマウスとIdo2-KOマウスに肝切除を実施後、残存肝を用いて細胞分化マーカー(Albumin、Lgr5、CD133)をウエスタンブロット法、リアルタイムPCR、免疫組織染色で確認した。その結果、細胞分化マーカーの発現に変化は認められなかった。 ③ Ido2-KOマウスにおける肝再生の促進機序を解明するために、切除後の残存肝および肝臓内単核球分画それぞれで、Ido2 mRNA発現を確認した。その結果、肝切除後の肝内単核球分画においてIdo2 mRNAの有意な発現の増強が確認された。一方で、トリプトファン代謝産物に大きな変化は認められなかった。 ④ 肝切除後の肝内単核球分画を用いて、肝再生に必須である炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6)発現をリアルタイムPCRで確認したところ、WTマウスに比べ、Ido2-KOマウスで有意に増加していた。また血清中のサイトカイン濃度をELISAで測定したところ、mRNA発現と同様にIdo2-KOマウスにおいて増加が確認された。 ⑤ 変化を認めた炎症性サイトカインの発現・産生に関与するNF-κBの核内移行を免疫細胞化学染色およびウエスタンブロットで確認したところ、WTマウスに比べIdo2-KOマウスで亢進していた。
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