研究実績の概要 |
前年度に食道扁平上皮癌細胞株のCD63ノックダウンから得られたHER2との関係につき、食道扁平上皮癌切除標本におけるCD63およびHER2の発現解析を含めて研究を継続した。 Pilot studyとして行なった食道扁平上皮癌術前未治療症例(n=86)の免疫染色で得られた知見の再現性評価のため、validationとして2005-2013年における食道癌切除標本(n=132)を用い、CD63,HER2の免疫染色及び臨床病理学的因子との統合解析を行なった。CD63の発現に関しては、壁進達度(P=0.77),リンパ節転移の有無(P=0.47),分化度(P=0.62)との相関は認められず、今回の検討ではOS(P=0.48,Log-rank test), DSS(P=0.98,Log-rank test)ともに有意差を認めなかった。また、CD63とHER2の免疫染色態度に関しても相関を認めなかった(P=0.53)。本検討においては腫瘍細胞自体の染色態度を検討したが、今後腫瘍間質の染色態度と臨床病理学的因子との解析もすすめていく予定である。 また、HER2に対する解析のために、HER2陽性上部消化管癌に対する患者組織由来マウスモデル(Patient derived xenograft;PDX)作成を行い、HER2陽性腫瘍3症例の生着を得た。また1例に関しては継代および凍結融解が可能なことを確認し、HER2阻害薬を含めた治療介入によりHER2に起こる変化につき解析を開始した。 食道扁平上皮癌由来エクソソームの高濃度存在下で起こる癌細胞の変化については、癌細胞の増殖能低下、遊走上昇、細胞周期の抑制という表現系および遺伝子発現変化をきたすことを確認し、この成果はオープンアクセスによる論文発表(Cancer Science 2020 Dec;111(12):4348-4358.)となった。
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