研究課題/領域番号 |
19K23881
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石橋 嶺 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (50843299)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 末梢血循環腫瘍細胞 |
研究実績の概要 |
癌の診療は、オンコパネルを用いた遺伝子解析に基づく薬剤適応決定に見られるように、癌細胞内の遺伝子変異・発現情報に基づいた診療に急速にシフトしつつある。したがって、今後、簡便に、頻回に、癌細胞の遺伝子情報を取得する方法が間違いなく必須となる。血中循環腫瘍細胞(circulating tumor cell)の捕捉は、その手法のひとつであるが、申請者は数年来、簡便なポリマー樹脂CTCチップを応用し、閉塞性大腸癌に対する内視鏡的金属ステント留置術の前後でのCTC数の変化と中心に検討しつつCTCの確実な捕捉法を樹立してきた。本申請研究では、CTCの捕捉から遺伝子解析に研究を進め、大腸癌患者を対象に、捕捉したCTCのホットスポットの遺伝子変異の半網羅的解析とRNA発現状況の半網羅的解析を行い、それらと臨床情報とを統合して解析することで、真に遠隔転移惹起と相関する遺伝子変異・発現遺伝子セットを同定する。そのうえで、転移ドライバー分子を絞り込み、機能解析を加えて大腸癌遠隔転移責任分子を同定するとともに、CTCの捕捉と遺伝子解析の臨床的有用性を実証することを目的としている。 今年度は、ポリマーCTCチップからの捕捉された癌細胞の回収法とそこからの遺伝子解析が可能かどうかを検討した。まずCTCチップからの回収には、グリシンpH2.2を流すことによって抗原抗体反応が外れて細胞が回収できることをみいだした。 さらに、回収された細胞からゲノムDNAを抽出し、kras変異の有無をdigital PCRで検討したところ、ある一定の確度できちんと測定できることを見出した。さらに一細胞からのゲノムワイドのDNA増幅法も確立したので、稀少な細胞であっても増幅処理を加えることで遺伝子解析が出来ることを証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度目標にしていたCTCチップからの捕捉細胞の回収とその細胞を用いた遺伝子解析の方法の確立にある程度めどがたったので、次年度は 実際の臨床検体での解析と病態との関連について検討をしていくことが出来ると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、実際に大腸がんの転移巣をもつ患者さんの血液と、転移の無い患者さんの血液を用いて、循環する癌細胞を捕捉し、その遺伝子発現状況を網羅的に検討することで、易転移癌細胞の遺伝子発現の特徴を明らかにする。特に これまで癌幹細胞のマーカーとして知られているLgr5の発現に関しては特に着目して検討を進める。
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