研究課題/領域番号 |
19K23884
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
玉内 学志 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (50845097)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 卵巣がん / 微小環境 / 抗癌剤耐性 |
研究実績の概要 |
卵巣癌は予後不良な癌種の一つであり、抗癌剤への容易な耐性獲得がその主因である。再発卵巣癌は多発的な病変を形成するが、抗癌剤治療によって縮小する病変と増大する病変とがしばしば混在し、この病態は近年では腫瘍内の遺伝子多様性の観点で論じられてきたが、腫瘍周辺の微小環境の違いがエピジェネティックに誘導する悪性形質である可能性がある。研究代表者は、低酸素状態において低濃度の抗癌剤投与が、かえって癌細胞の増殖を亢進することを見出し、腫瘍ごとの微小環境の差異が、抗癌剤感受性の差異を生み出す可能性を見出した。少量の抗癌剤投与が、かえって癌の増殖を促進するという現象を「抗癌剤ホルミシス」と命名し、さらなる検証を深めてきた。具体的には、in vitroでのアッセイとして、複数の卵巣癌細胞株と複数の抗癌剤を用いて、主に低酸素状態で抗癌剤ホルミシスが生じることを確認した。また、in vivoでの検証として、マウス卵巣癌xenograftにおいても、少量の抗癌剤を投与することで、抗癌剤非投与群よりも腫瘍が増大すること明らかにした。マウスxenograftで抗癌剤ホルミシスが生じる機序については、低酸素状態によるものかは不明であり、今後同xenograftにおける腫瘍組織を用いて網羅的解析を行うことで、その機序を明らかにする予定である。このように、卵巣癌細胞において抗癌剤ホルミシスが誘導される機序解明につながる基盤を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗癌剤ホルミシスはこれまで提唱されていない概念であり、細胞株を用いたin vitroの系に加えて、マウスxenograftを用いた系でも抗癌剤ホルミシスが実証されたことが、ここまでの最大の成果であり、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
抗癌剤ホルミシスが生じる細胞の状態について検証するべく、以下の推進方策に基づき研究を進めていく予定としている。 ① 抗癌剤ホルミシスによって増大したマウス腫瘍を用いて、抗癌剤ホルミシスが誘導される機序を明らかにするべく網羅的解析を行う。 ② ①で特定した分子を細胞に導入することで、抗癌剤ホルミシスがin vitroで再現されることを確認する。 ③ 上記分子を標的とした治療戦略を検討する。 以上を推進することで、研究課題の達成につなげていく。
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