研究実績の概要 |
直腸癌の化学放射線治療に対する治療抵抗性への上皮間葉移行(EMT)及び癌幹細胞の関与を明らかにするとともに,メトホルミンによるEMT阻害効果を確認するべく本年度は以下の実験を計画した.1)大腸癌細胞株でのスフェロイド作成,2)スフェロイド細胞への放射線照射によるEMTの誘導確認,3)抗癌剤を用いた細胞障害実験及びメトホルミン付加による細胞障害効果の確認, について実験を行った. まず,昨年の成果として,結腸腺癌細胞株のLoVo及びDLD-1を用いて3D培養を行い,スフェロイド細胞塊を樹立することに成功した.フローサイトメトリーを行い,スフェロイド細胞において,2Dコントロール細胞株と比較して大腸癌幹細胞のマーカとされるCD133陽性かつCD44陽性の細胞比率が増加していることを確認した. 放射線照射によるEMT誘導を確認すべく,大腸癌細胞株Lovo,DLD1から作成したスフェロイド培養モデル対してそれぞれ,1, 5, 10Gyの48時間放射線照射を行い直腸癌放射線治療を模したモデルを作成した.このモデルを用いてE-cadherin, N-cadherin, HIF-1α,TGF-β1の発現についてWestern blot法を用いて確認したが,本研究では,放射線照射によるEMT誘導関連蛋白の上昇を証明することができなかった. DLD1,Lovoそれぞれを用いて5-FU, メトホルミンを用いた細胞傷害実験を行いMTT assayにて評価した.2D培養モデルを用いた検討では,5-FU及びメトホルミンの濃度依存的な細胞傷害性及び,5FUへのメトホルミン付加による細胞傷害増強効果を確認できた.しかしながら,スフェロイド培養モデルを用いた細胞傷害実験で2D培養モデルのような安定した実験系を確立することができず,メトホルミンによる細胞傷害増強効果を確認することができなかった.
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