研究課題/領域番号 |
19K23891
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鶴田 朗人 九州大学, 薬学研究院, 学術研究員 (40847745)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | RNA修飾 / グリオブラストーマ / NAT10 / がん幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究ではグリオブラストーマの悪性化機構に及ぼすNAT10の影響解析を行っている。グリオブラストーマ幹細胞性に及ぼすNAT10の影響について解析するために、NAT10をノックアウト(KO)したグリオブラストーマ細胞株をCRISPR/Cas9を用いて作製した。作製したNAT10KOグリオブラストーマを用いてmRNAのアセチル化レベルについてドットブロット法を用いて確認したところ、NAT10KO 細胞株ではmRNAアセチル化レベルの減少が確認できた。次に、アガロースゲルを用いた足場非依存的な増殖によるスフェロイド形成アッセイ法を用いて、スフェロイド形成能に及ぼすNAT10KOの影響について解析を行ったところ、Naiveのグリオブラストーマ細胞と比較してNAT10KOグリオブラストーマ細胞ではスフェロイド形成能が低下することが明らかになった。これは、NAT10がグリオブラストーマ幹細胞性維持において重要な役割を果たすことを示している。また、グリオブラストーマ幹細胞は治療薬に対して高い抵抗性を示すことが知られている。そこで治療薬として用いられるテモゾロミドに対する感受性について評価を行ったところNaiveのグリオブラストーマ細胞と比較してNAT10KOグリオブラストーマ細胞においてテモゾロミド感受性が上昇していた。これらの結果から、グリオブラストーマ細胞の幹細胞性維持にNAT10が重要な役割を果たすことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R1年度で予定していたin vitroの実験でのグリオブラストーマ幹細胞性評価は概ね達成できており、次年度以降のin vivoの実験の基盤となるデータは集められている。R2年度ではin vivoでの検討および、NAT10によるアセチル化標的遺伝子のさらなる解析を行う。
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今後の研究の推進方策 |
実験1 in vivoでの野生型およびNAT10 KOのU251 MG細胞をSCID マウス(免疫不全マウス)の脳内に移植し、U251 MG細胞の増殖能、浸潤能、薬剤・放射線抵抗性をマウス生存率、組織学的解析法を用いて解析し、腫瘍の悪性度の比較を行う。 実験2 野生型およびNAT10 KO U251 MG細胞を対象に、オリゴdTビーズを用いたmRNAの精製と抗アセチル化抗体を用いたRNAの免疫沈降(RIP Assay)を行うことでアセチル化RNAの精製を行い、次世代シーケンス解析と組み合わせることで、アセチル化されるRNAの解析を行う。NAT10によるアセチル化標的遺伝子の同定をした後、標的mRNAの安定性や翻訳効率について評価を行う。
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