研究課題
様々な癌種で癌細胞の腫瘍内不均一性と腫瘍組織内に存在する免疫細胞の組成や性質が、癌の進展や治療抵抗性と関わることが知られてきた。我々はこれまでに、一枚のホルマリン固定パラフィン包埋切片から12種類のエピトープを免疫組織化学で解析できるmultiplex immunohistochemistry (IHC)ならびにその画像定量化技術image cytometryを初めて開発し、3枚の切片から定量化可能な14種類の免疫細胞の組成や性質を統計解析することで、癌の亜分類や予後と相関する腫瘍の免疫的性質を報告してきた。また、この手法を用いて、我々はこれまでに、甲状腺乳頭癌の腫瘍組織内部の免疫特性が周囲非癌部と異なることや、病理学的侵襲性と骨髄系免疫細胞の細胞密度に相関がみられることから、甲状腺癌の発生・進行に免疫的機序が関与する可能性を報告してきた。本研究では、甲状腺濾胞癌の発生・進行に関わりうる免疫的機序を組織内免疫細胞分布を調べることで解析し、甲状腺濾胞癌の早期診断や発癌機序の解明に寄与する組織バイオマーカーの確立を目的とする。平成31年度はDiscovery cohortを用いて濾胞癌巣内と周囲非癌部における免疫的微小環境の検討を計画し、予定通りに甲状腺濾胞癌症例21例において多重免疫染色ならびにデジタル画像解析による定量化を完了した。濾胞癌の被膜浸潤部における特異な免疫的微小環境特性の存在が示唆され、次年度でのValidation cohortでの解析に向けた基盤的データを取得した。これらの研究成果の一部を第43回日本頭頸部癌学会において発表し、共著論文1編を報告した。
2: おおむね順調に進展している
平成31年度に予定していた、Discovery cohortとして甲状腺濾胞癌症例21例において多重免疫染色ならびにデジタル画像解析による定量化を完了し、濾胞癌巣内と周囲非癌部における免疫的微小環境を検討した。濾胞癌の被膜浸潤部における特異な免疫的微小環境特性の存在が示唆され、次年度でのValidation cohortでの解析に向けた基盤的データを取得できている。
・濾胞癌微小浸潤例における浸潤先進部の免疫的微小環境解析 :多重免疫染色法で位置情報の解析が可能であることを活用し、上記で解析した検体で腫瘍被膜浸潤部における免疫的微小環境を解析し、腫瘍中心部や非浸潤辺縁部との差異の有無を検討する。・ 濾胞癌形成に関わる免疫的微小環境因子の検討 (Validation cohort) :上記で得られたデータを解析し、癌の内部や浸潤部形成に関与する免疫細胞種を同定し、Validation cohortで検証を行う。この中で、利用可能な血管浸潤性、リンパ節転移、後発遠隔転移の有無や予後情報との相関も検討する。解析結果に基づき、甲状腺濾胞癌の診断や新規治療に関連する組織バイオマーカーの同定を行う。
上記の通り当初の研究計画通りに進行したが、12430円が端数として生じたため、次年度の免疫組織化学解析で使用する抗体購入費に当てる予定である。
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頭頸部癌
巻: 45 ページ: 362-365