研究課題/領域番号 |
19K23895
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
長田 直希 自治医科大学, 医学部, 助教 (60840858)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 多発性骨髄腫 / Ikaros / 免疫調節薬 / 転写制御 / エピジェネティクス / ChIP-Atlas |
研究実績の概要 |
Ikarosは多発性骨髄腫の生存に重要な役割を果たす転写因子で、標的遺伝子としてIRF4が知られているが、転写制御の機序については不明の点が多い。そこで本研究においては、多発性骨髄腫におけるIkarosの標的遺伝子を網羅的に解析し、それらに共通する結合配列の同定と協調して結合する因子の同定を試みた。 初めに多発性骨髄腫細胞株MM.1Sを用い、Ikarosのゲノム上への結合部位をchromatin immunoprecipitation with high-throughput DNA sequencing(ChIP-Seq)にて網羅的に解析し、得られたChIP-SeqデータをChIP-Atlas softwareにて分析した。加えて、MM.1S及びKMS12細胞におけるlenalidomide作用時の遺伝子発現パターン変化をcDNA microarrayにて解析した。ChIP-Seqの結果から、今までIkarosの標的遺伝子として報告のあったIRF4、SLAMF7に加え、新たにCD48、CD147(BSG)が標的遺伝子である可能性が判明した。またcDNA microarrayの結果から、lenalidomideを作用させるとTIGIT、CNTRL、IRF4、CCND1の発現が低下することが、ZAP70、ITGB1、STAT3の発現が増加することが明らかとなった。これら標的候補遺伝子の配列情報を詳しく解析したところ、IRF4とSLAMF7にはFos結合配列があるが、CD48とCD147(BSG)にはFos結合配列がないことがわかった。また、免疫沈降法によりIkarosと複合体を形成する分子の同定を試みたが、MM.1S及びKMS12細胞を用いた実験では同定することができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
免疫沈降法の条件設定やshRNAレンチウイルスシステムなどを用いたFosノックダウンMM細胞の作成と解析など、in vitroの系がなかなか安定せず、予想された結果を出すまでに至っていない。今後、使用する細胞数や培養条件、システムの変更等を行い、安定した至適実験条件を見出し、研究を推進していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
免疫沈降法の設定を再検討し、Ikarosと複合体を形成する分子の同定を試みる。また、ChIP-SeqデータからIkarosとFosが物理的・機能的に協調して一部の標的遺伝子の転写を促進する可能性とFos結合配列を有さない遺伝子にIkarosが結合する際の様式およびoutputの違いについて解析を行なっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費を効率的に使用した結果、少額は翌年度へ持ち越しとなった。この金額は次年度の消耗品、実験試薬等に使用する。
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