研究課題/領域番号 |
19K23896
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
齊藤 康弘 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 特任講師 (30613004)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 細胞極性タンパク質 / 乳がん / アミノ酸トランスポーター |
研究実績の概要 |
細胞極性タンパク質であるLLGL2はER陽性乳がん細胞において高発現しており、アミノ酸トランスポーターSLC7A5の細胞膜局在を制御することにより、細胞増殖を亢進する。また、ER陽性乳がん細胞においてLLGL2-SLC7A5複合体はER陽性乳がん細胞の増殖だけではなく、ER陽性乳がん細胞の抗がん剤に対する耐性獲得に非常に重要である。 栄養が限られた状態である栄養ストレス下においてLLGL2-SLC7A5相互作用は著しく増加することから、本研究では栄養ストレス依存的に増強されるLLGL2-SLC7A5複合体形成の分子機構の解明を試みることとした。 本年度はLLGL2もしくはSLC7A5が栄養ストレスにより活性化され、複合体形成が促進される分子機構を明らかにするため、翻訳後修飾のデータベースであるPhosphositeを用いて、LLGL2およびSLC7A5の翻訳後修飾の検索を行った。その結果、これら2つの分子は機能が不明であるリン酸化部位を複数有していることが明らかとなった。そこで、まず我々は栄養ストレス依存的にLLGL2-SLC7A5複合体形成の増強にタンパク質のリン酸化が関与していると推察し、LLGL2もしくはSLC7A5のリン酸化状態が栄養ストレスにより変化するかを検討したところ、栄養ストレス依存的なLLGL2ならびにSLC7A5のリン酸化状態の変化は認められなかった。次に、栄養ストレス依存的なLLGL2-SLC7A5複合体形成の増強において、他の分子の関与を推察し、網羅的に探索したところ複数の分子がLLGL2-SLC7A5複合体形成に関与していることが明らかなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではタンパク質の翻訳後修飾データベースであるPhosphositeを用いてLLGL2もしくはSLC7A5の翻訳後修飾を検索したところ、LLGL2およびSLC7A5は複数の機能が未知のリン酸化部位を有していることが明らかとなった。そこで、我々は栄養ストレス依存的なLLGL2-SLC7A5複合体形成において、リン酸化の関与を予想し、栄養ストレス刺激を加えることによりLLGL2ならびにSLC7A5のリン酸化状態を調べた。しかしながら、LLGL2およびSLC7A5分子において栄養ストレス依存的なリン酸化の変化を検出することができなかった。 次に、我々は栄養ストレス依存的なLLGL2-SLC7A5複合体において、他の分子の関与を推察し、LLGL2-SLC7A5複合体を形成する分子に相互作用する分子の探索を行ったところ、LLGL2-SLC7A5複合体は複数の他の分子と相互作用し、巨大な複合体を形成していることを明らかとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策として、LLGL2-SLC7A5複合体形成が栄養ストレス依存的に増強される分子機構として、新たに同定された分子群が栄養ストレスを感知し、活性化され、LLGL2-SLC7A5複合体形成に寄与することを仮説とし、機能的解析を行う予定である。具体的には、新たに同定された分子のリン酸化などの翻訳後修飾の状態を栄養ストレスの有無による比較を行い検討し、栄養ストレス依存的なLLGL2-SLC7A5複合体形成の分子機構を明らかにすることを予定している。
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