研究実績の概要 |
全HOX遺伝子の中で、Luminal乳癌のクラスタリングにおいて予後を分けている遺伝子がどれであるか、公開データを用いて解析を行なった。その結果から、Luminal乳癌のクラスタリングにおいて特にHOX-C10遺伝子が中心となり予後を分けていることが明らかとなった。Luminal乳癌細胞株の実験では、T47DとMCF7は予後が良好であるLuminal Aに分類されることが分かった。これらの細胞株に対してWnt経路の活性化を行い、HOX-C10を中心としたHOX遺伝子の発現およびHOXシグネチャーの変化を確認する実験を行なった。 Luminal乳癌におけるHOXシグネチャーを用いた予後の解析については、始めの段階としてオンライン公開データを用いてHOXシグネチャーによる予後予測アルゴリズムの妥当性を評価した。Luminal乳癌の予後予測検査としてOncotypeDXが既に実用化されており、研究用に使用できるOncotypeDXの擬似アルゴリズムを入手した。オンライン公開データを対象としたLuminal乳癌の再発予測アルゴリズムの感度と特異度は、OncotypeDXの擬似アルゴリズムでは感度54%と特異度31%であったが、HOXシグネチャーによる予後予測アルゴリズムを用いると感度61%と特異度64%であり、HOXシグネチャーを用いることでより正確にLuminal乳癌の予後を予測できることが示された。白血病、肉腫の公開データを用いた解析でも、HOXシグネチャーによって予後を分けることができた。 HOX遺伝子の共変動解析では、公開データを用い、乳癌においてHOXA,B,C同士が強く共変動していることが示され、正常乳腺では共変動が弱いことが示された。当院の臨床検体を用いた同様の解析でも一致した結果が得られた。HOXシグネチャーでも、より悪性度が高い方が強い共変動を認める結果は一致した。
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