マウス膀胱癌細胞株とヒト膀胱癌細胞株のSORL1の発現をウェスタンブロット法にて確認し、その中でも高発現していたマウス膀胱癌細胞株B-UPPL3およびB-UPPL4とヒト膀胱癌細胞株CAL29を用いてCRISPR-Cas9法によりSORL1をknock-outした。 SORL1の機能解析において、SORL1 knock-out細胞はcontrol細胞と比較して遊走能と浸潤能が統計学的に有意に上昇していることを確認し、SORL1の喪失が腫瘍の進展に関与することが推察された。増殖能は差がなかった。ウェスタンブロット法でSORL1 knock-out細胞ではROCK1およびROCK2の発現が上昇し、その下流シグナルであるリン酸化cofilin(不活性化型)の発現上昇していることも確認された。SORL1 knock-out細胞における遊走能・浸潤能の上昇に関与する分子生物学的な機序として、SORL1の喪失によりROCK1およびROCK2発現の上昇が起きLIMKを介してリン酸化cofilin(不活性化型)が優位になることによりF-アクチン重合が進んでinvadopodia形成が起きていると考えられた。 次にSORL1 knock-out細胞に対するROCK阻害剤Y-27632の治療効果判定を行った。Y-27632と溶解液DMSOをそれぞれSORL1 knock-out細胞とcontrol細胞に投与し比較した。Y-27632を投与することよりSORL1 knock-out細胞の遊走能・浸潤能は有意に低下し、control細胞では変化は認められなかった。DMSOではSORL1 knock-out細胞の遊走能・浸潤能は変化しなかった。Y-27632を投与したSORL1 knock-out細胞では、リン酸化cofilinの発現が低下しておりF-アクチンを切断・脱重が進んでいると考えられた。
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