我々はがん幹細胞が肝臓に転移巣を形成する乳がん患者由来の腫瘍異種移植(PDX)マウスモデルを確立し、肝臓に転移したがん幹細胞でS100A10の発現レベルが原発巣よりも高いことを見出した。S100A10がマトリックスメタロプロテアーゼ活性やがん幹細胞関連遺伝子の発現レベルを制御し、乳がん細胞のS100A10発現量とin vitroでの浸潤能力や3次元オルガノイド形成能力には相関関係があることを明らかにした。また、S100A10の遺伝子発現を抑制すると、乳がん細胞の生体内での肝臓への転移能力が著しく低下した。S100A10は乳がん幹細胞の転移促進因子として機能していることが示唆された。
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