研究課題
腫瘍は非常に不均一な細胞集団で構成されることが明らかになっており、その中には自己複製能と分化能を併せ持ち、腫瘍の発生のみでなく、治療後の再発の原因ともなるがん幹細胞 (Cancer stem-like cell; CSCs) と呼ばれる少数の細胞集団が存在することもわかってきた。CSCsを標的とした治療法を開発するため、申請者はこれまでにCSCsの性状解析を進めてきており、DNA複製に関与するminichromosome maintenance protein 10 (MCM10) の発現亢進がストレス環境下でのCSCsの生存に寄与することを見出してきた。siRNA等を用いたMCM10の発現抑制によってCSCsに優先的に細胞死を起こさせることができるというこれまでの実験結果に基づき、本研究ではMCM10の発現亢進がCSCsの生存に寄与するメカニズムを明らかにすることを目指した。申請者が最終年度に実施した解析の結果から、CSCsでは他のがん細胞と比較して遺伝子の転写活性が亢進しており、転写に関わる因子と複製に関わる因子の衝突がDNA上で高頻度で生じていることが明らかになった。CSCs内で発現亢進を受けたMCM10はそのような複製ストレスの生じやすい環境において、休眠状態の複製起点を高効率で活性化させることでCSCsの生存や増殖に寄与していることを示唆する結果も得られた。このような研究結果より、予後不良の原因となるCSCsを治療標的とするうえでMCM10をターゲットにすることの有効性が示されたと考えられる。
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