研究課題/領域番号 |
19K23911
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
石橋 公二朗 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (10847601)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 脳転移微小環境 / アストロサイト |
研究実績の概要 |
本研究では、転移性脳腫瘍において重要な役割を果たすと考えられているアストロサイトの活性化がどのようなメカニズムで引き起こされているのかを明らかにする。特に、がん細胞存在下におけるアストロサイトと周囲のグリア細胞の相互作用に着目して解析を行うことにより、脳微小環境における細胞間相互作用をターゲットにした転移性脳腫瘍の治療法の開発を目指す。 2019年度はneonatal mouseから抽出したprimary astrocyteを長期間に渡り安定的に培養することができる新規培養法を確立した。従来の培養法では、neonatal mouseから抽出した脳の細胞集団からアストロサイトのみを単離し、プラスチックディッシュ上で培養しており、培養開始2週間程度でアストロサイトの性質が変化してしまうことを明らかにした。一方、新規培養法では、アストロサイトとグリア細胞の相互作用、ならびに基質の硬さに着目することで、アストロサイトの性質を1ヶ月以上に渡り安定的に維持することが可能になった。 さらに、これらグリア細胞とがん細胞を共培養することで、脳転移を模倣できる二次元、および三次元共培養モデルを構築した。この培養モデルを用いて解析を行った結果、がん細胞の存在下におけるアストロサイトの活性化には周囲のミクログリアの存在が重要であることを明らかにした。 現在は、アストロサイトーミクログリア間の相互作用が、どのようにしてアストロサイトの性質を維持し、活性化させるのかについて解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述したように、primary astrocyteを長期間安定的に維持することができる培養法の確立に成功した。これにより、これまでは解析することができなかったがん細胞とアストロサイトの相互作用を長期間にわたり解析することが可能になった。さらに、がん細胞ーアストロサイトーミクログリアの相互作用が転移性脳腫瘍の形成に重要であることを明らかにしつつある。 このように、2019年度は研究計画通り、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画発案当初は、アストロサイトの活性化と活性化の維持には周囲の正常アストロサイトとの相互作用が重要であると考えていたが、解析の結果、ミクログリアとの相互作用が重要であることが明らかになった。そこで2020年度は、アストロサイトとミクログリアの相互作用に着目して解析を行うことにより、脳転移ニッチの形成メカニズムを明らかにしていく。 具体的には、三次元共培養モデルを用いて、活性化アストロサイトががん細胞に与える影響を解析する。さらに、化合物ライブラリーを用いて、活性化アストロサイトの作用を増加、または減少させる化合物のスクリーニングを行う。 これにより、活性化アストロサイトがどのようなメカニズムでがん細胞に作用しているのかを明らかにすることで、脳転移がん細胞の周囲のアストロサイトをターゲットとした転移性脳腫瘍に対する新規治療法を開発することを目指す。
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